令和4年度税制改正大綱が発表されたが、税理士制度についても、日本税理士会連合会(日税連)の要望通り、見直される。ただ、日税連の要望にはなかった項目として、「懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設等」と「税理士法に違反する行為又は事実に関する調査の見直し」が盛り込まれている。一体どういった内容なのだろうか。

令和4年度税制改正大綱に、税理士に対する処分として以下の内容が盛り込まれた。
<改正内容>
・氏名や不正内容をHPや官報で公表
・業務停止相当に該当すれば期間中の復帰を禁止
・懲戒処分等の除斥期間の創設(10年)
・税理士法違反に関する質問検査等の強化
具体的には、「(8)懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設等」。内容は以下の通りだ。
① 財務大臣は、税理士であった者につき税理士であった期間内に懲戒処分の対象となる行為又は事実があると認めたときは、その税理士であった者が懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をすることができることとする。この場合において、財務大臣は、その税理士であった者が受けるべきであった懲戒処分の種類(その懲戒処分が税理士業務の停止の処分である場合には、懲戒処分の種類及び税理士業務の停止をすべき期間)を明らかにしなければならないこととする。
(注)財務大臣は、上記の決定をしたときは、遅滞なくその旨を官報をもって公告しなければならない。
② 税理士の欠格条項に、上記①により税理士業務の禁止の懲戒処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、その決定を受けた日から3年を経過しないものを加える。
③ 税理士の登録拒否事由に、上記①により税理士業務の停止の懲戒処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、上記①により明らかにされた税理士業務の停止をすべき期間を経過しないものを加える。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後にした違反行為等について適用する。
上記は、税理士業務の適正な運営を確保する観点から、懲戒逃れを図る「元税理士」等へ対応について盛り込まれた項目。税理士法違反に係る調査(税理士調査)及び懲戒処分の対象は、現行の税理士法では、現職の税理士・税理士法人に限定されていることから、懲戒手続開始前に自ら登録を抹消して処分を回避することが以前から問題視されてきた。これに対処するための法整備を行うという内容だ。
これまで不良税理士に対しては、調査中に自主的に廃業されてしまうと、調査が中断され処分されなくなる。自主廃業してしまえば、税理士会に認められれば再度登録することも可能で、懲戒逃れのために自主廃業するものが少なくなかった。国税当局は守秘義務があり、調査内容を税理士会に伝えることができないためだ。
こうした問題に対応するため税理士法を見直し、財務大臣は、その税理士であった者が受けるべきであった懲戒処分の種類(その懲戒処分が税理士業務の停止処分である場合には、懲戒処分の種類及び税理士業務の停止をすべき期間)を明らかにしなければならないとした。
この制度創設に伴い、税理士の欠格条項と登録拒否事由を見直している。
欠格条項については、税理士業務の禁止の懲戒処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、その決定を受けた日から3年を経過しないものを加える。
登録拒否事由については、税理士業務の停止の懲戒処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、明らかにされた税理士業務の停止をすべき期間を経過しないものを加える。