審判所の判断

審判所は以下の通り、財産債務調書の軽減措置は適用されず、国外財産調書の加重措置のみが適用されると判断した。

  1. 国外財産調書の提出制度では、国外財産調書の適正な記載及び提出を確保するためのインセンティブとして、国外財産調書を提出期限内に適正に記載して提出した場合には、記載された国外財産に関して所得税等の申告漏れが生じたときであっても、加算税を5%軽減する(国外財産軽減措置)一方、国外財産調書を提出期限内に提出しなかったとき又は提出された国外財産調書に記載がない国外財産に関して所得税等の申告漏れが生じたときは、加算税を5%加重する措置(国外財産加重措置)が設けられている(国外財産特例措置)。
  2. 財産債務調書の提出制度においても、国外財産調書の提出制度と同様に、財産債務調書を提出期限内に適正に記載して提出した場合には、記載された財産又は債務に関して所得税等の申告漏れが生じたときであっても、加算税を5%軽減する(財産債務軽減措置)一方、財産債務調書を提出期限内に提出しなかったとき又は提出された財産債務調書に記載がない財産若しくは債務に関して所得税等の申告漏れが生じたときは、加算税を5%加重する措置(財産債務加重措置)が設けられている(財産債務特例措置)。
  3. 財産債務特例措置の適用対象については、「財産債務調書への記載を要しない国外財産」を除く旨が規定されている。適用が除外される「国外財産」とは、居住者が国外財産調書を提出する義務を負う場合における国外財産であるから、このような国外財産については、財産債務特例措置は適用されないことになる。
  4. したがって、居住者が国外財産調書及び財産債務調書の両方について提出義務を負う場合に、国外財産に係る所得税等に関し修正申告があり、過少申告加算税が賦課されるときは、財産債務特例措置は適用されず、国外財産特例措置のみが適用されることになると解される。
  5. 本件における過少申告加算税については、本件株式に係る配当所得の部分も含めて国外財産加重措置が適用される。
  6. Aは、韓国法人株式については、提出期限内に提出した財産債務調書に記載していたのであるから、過少申告加算税のうち、韓国法人株式の配当所得の部分については、財産債務軽減措置が適用されるべきである旨主張する。しかしながら、韓国法人株式は、国外財産調書に記載すべき国外財産であるから、これを財産債務調書に記載して提出期限内に税務署に提出していたとしても、財産債務軽減措置は適用されない

コメント

財産債務調書と国外財産調書の両方の提出要件に該当する場合には、当然のことながら、財産債務調書と国外財産調書の両方を提出しなければなりません。

今回のケースのように、財産債務調書は提出していたものの、国外財産調書の提出を失念していた場合、その後の税務調査で国外財産についての申告漏れを指摘されると、過少申告加算税は国外財産調書の5%加重措置が適用されることとなるため、提出漏れのないよう注意が必要です。


個別転職相談(無料)のご予約はこちらから

最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。

 

◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします

メルマガを購読する