結果の目的語と「帳簿」

もっとも、こうした不思議な表現は「結果の目的語」といって、決して文法的に間違っているわけではありません。しかしながら、次に見る租税法上の「帳簿」とは何かを考えるに当たっては、少し気を付けなければいけない表現のように思われます。以下では、法人税法上の「帳簿書類」と、消費税法上の「帳簿」は同じものを指しているのか否かについて考えてみましょう。

法人税法126条《青色申告法人の帳簿書類》1項は、青色申告法人に対して、「財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ当該帳簿書類を保存しなければならない。」と規定します。すなわち、帳簿書類を「備付け」て→そこに取引を「記録」し→それを「保存」しなければならないとするのが法人税法の定めです。

このように考えると、法人税法上の「帳簿書類」とは、必ずしも取引が記録されたものであると理解すべきものではなく、むしろ、同法126条1項の規定からすれば、文理上、「取引が記録される前」の被記録媒体のことを帳簿書類と指しているようです。つまり「コクヨ」の白地のノートを買ってきて、取引を記入する前の未記入の状態であっても「帳簿書類」ということになりましょう。