裁判所の判断

①発行された有価証券の価額が「有利な発行価額」に当たる場合とは、当該有価証券の発行額を決定する日の現況における当該発行法人の有価証券の価額(時価)に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額で発行されている場合をいう。また、社会通念上相当と認められる価額を下回る価額で発行されているかどうかは、当該株式の時価と発行価額との差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるか否かによって判定するという法人税基本通達2-3-7の定めが合理性を有する。

②有価証券の時価の算定方法については、有利発行の場合の株式の取得価額について定めた法人税基本通達2-3-9⑶を準用し、「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」によるのが相当である

③発行価額決定日の時価の算定に当たっては、同日に最も近接した時期に作成された財務諸表の数値を用いるのが合理的であるということができるから、期末に作成された確定決算書よりも近接された時期に作成された四半期決算書等の財務諸表がある場合には、当該財務諸表がその当時の帳票類に基づいていて、その正確性に特段の疑いがない限り、当該四半期決算書等の数値に基づいて時価を算定するのが相当である。

④以上に基づき、A社株及びB社株について有利発行に当たるか否かの判定を行うと以下のようになる。

<A社株について>

  • ・払込価額:1株1,000バーツ
  • ・時価:1株1,681バーツ
  • ・差額:681バーツ
  • ・時価に占める差額の割合:40.51%(>10%相当額)

⇒有利発行に該当

<B社株について>

  • ・払込価額:1株1,000バーツ
  • ・時価:1株3,266バーツ
  • ・差額:2,266バーツ
  • ・時価に占める差額の割合:69.38%(>10%相当額)

⇒有利発行に該当

⑤なお、会社が主張した「タイにおける額面発行の原則等」については、タイの法律上、新株の発行においては額面額発行が予定されており、本件2社株についても、これに基づいて額面額で発行されていることを指摘するにすぎず、本件2社株の額面価額(1株1,000バーツ)が、それぞれの時価であったことを裏付ける事情であるということはできない。

コメント

本事案は控訴されたものの高裁は控訴を棄却し、上告も不受理となったことからX社の全面敗訴が確定しており、その後の類似事案の判決等にも影響を与えた事案である。

本事案のように海外子会社所在地国の資本規制等の影響により、意図せざる形で有利発行となってしまうこともあり得るため、海外子会社への増資に当たっては、有利発行に該当しないかどうかの確認が必要となる。


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