トーマツにおける人材

続いて「監査品質に関する報告書2021」における人材に関する記述を、「CHAPTER03 品質管理システム」の「監査品質の基盤となる人財戦略」と「「違い」を「価値」とするためのDiversity, Equity & Inclusionの推進」を中心に見ていきます。

トーマツが求める人材像は「経済社会からの要請に真摯な姿勢で誠実に対応し、高品質な業務を提供する、信頼あるプロフェッショナル」として定義されています。そして高品質な監査を担う人材の確保・育成を経営上の最重要事項の一つと位置付け、 (1)タレントマネジメントの推進、 (2) グローバル人財育成という観点から人財戦略を紹介しています。また高品質な監査&価値創出の基盤として(3)DEI(Diversity, Equity & Inclusion)の推進を掲げ、Personal Well-being具現化のため(4)働きやすい職場環境の整備、働きがいのある職場環境の整備を取り上げています。

以下、順にみていきます。

 

(1)タレントマネジメントの推進

タレントマネジメントの推進として、①多様な人財の採用、②監査品質を最重視した評価制度、③多様な経験を積むための機会の提供と活用、④キャリアデベロップメントを支援する「アセッサー制度」、⑤職位に応じた役割を達成する実践的な研修、⑥テクノロジー人財の育成の6項目が挙げられており、いくつか取り上げてみます。

 

「③多様な経験を積むための機会の提供と活用」

監査品質の強化に資する人材育成の観点から、監査以外の業務や品質・リスク管理部門での経験を積む機会としてトーマツ内およびグループ内外での異動を戦略的に行うとしています。年間約280名、構成人員の約4%にあたる社員・従業員が異動を経験しています。

 

具体的な異動先としては次のようになっています。

トーマツ内(77%) 品質管理業務のほか、金融関連、株式公開支援などの監査業務

グループ内(17%) 海外のDeloitteのほか、DTC、DTFA、税理士法人など

外部出向等(6%) 事業会社・金融機関のほか、官公庁(金融庁、経済産業省)や外部団体(JICPA、CPAAOB、ASBJなど)

「⑤職位に応じた役割を達成する実践的な研修」

「⑥テクノロジー人財の育成」

デロイト共通の研修プログラムのほか、外部機関によるリベラル・アーツ研修も実施されています。また監査業務のデジタル化が進展する中、デジタル技術に対応可能な監査人育成プログラムの一環としてシニアスタッフ以上の社員・職員約2,700名が受講している「Tech Savvy」などが実施されています。この結果、社員・職員1人当たりの平均研修時間は82時間となり(2020年4月~2021年3月)、年間平均執務時間のうち、社員では3.7%、職員では4.5%を占めています。

(2)グローバル人財育成

日本企業のグローバル化を受けて監査業務でもグローバル化が進む中、実践的な英語力を有し他国の担当者と円滑に業務が遂行できる人財を育成するためグローバル人財育成を重視するとしており、具体的な取り組みとして①海外派遣制度、②語学研修、③グローバルでのリーダー育成という3項目が挙げられています。これらの施策を受け、海外勤務を経験した社員の割合は36%となっています。

(3)Diversity, Equity & Inclusion(DEI)

従来、多様性を包含する組織づくりとしてDiversity & Inclusion(D&I)を掲げていましたが、高品質な監査と社会価値創出の基盤として、公平性の担保を含むDiversity, Equity & Inclusion(以下、DEI)という考え方に進化させたとしています。

具体的なDEIの取り組みとして①Inclusiveなカルチャーの実現(Respect & Inclusion研修など)、②多様なメンバーのInclusion(Deloitte Tohmatsu Rainbowなど)、③ワークライフバランス(不妊治療・産前産後・育児・介護に関する各種制度・サポートなど)、④女性活躍推進(各種ワークショップ・研修など)が挙げられています。

 

AQIの1つに挙げられている女性比率を見ると、パートナー・マネージングディレクターでは10%、シニアマネジャー・マネジャーでは20%となっていますが(2021年実績)、2025年にはそれぞれ14%、24%にまで上昇させることを目標として掲げています。

 

政府が「第5次男女共同参画基本計画」の中で目標として掲げる指導的地位に占める女性の割合30%には現時点で達していませんが、同計画では「2020年代の可能な限り早期」という期限を設定しており、これに向けて女性比率を高めていくことが想定されます。

なお帝国データバンクによると2021年3月期決算の上場企業2,220社の女性役員比率は7.4%(*3)、また東京商工リサーチによると大企業の女性管理職比率は5.8%(*4)となっています。法人の形態、規模、業種等さまざまであるため一概に比較はできませんが、これらの調査結果とあわせてみると、現時点においてトーマツの女性比率は比較的高いと言えそうです。

(4)働きやすい職場環境の整備、働きがいのある職場環境の整備

仕事の達成感や人としての成長と幸福を実感できるWell-beingを具現化する方策として①具体的な「時間創出」のための施策、②New Normal下における新しいワーキングスタイル、③達成感と成長実感の3点が挙げられています。

 

このうち、①具体的な「時間創出」のための施策では労務管理のほか、テクノロジーを利用した監査業務の改革、業務量の削減や効率化、土日及び平日夜間のネットワークアクセス制限、Talent Experience Surveyなどが記載されています。また②New Normal下における新しいワーキングスタイルではリモートワークの活用が謳われています。

AQIに掲げられている平均執務時間を見ると、社員が2,196時間、職員が1,921時間となっています。時期はズレていますが、日本経済団体連合会の調査による2019年の総実労働時間2,022時間(管理監督者)、2,000時間(一般労働者)(*5)と比べると、監査法人における労働時間はそれほど長くはなさそうです。

 

なお対前期では、社員が+171時間(+8%)、職員が+114時間(+6%)と増加傾向にあります。これが新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたNew Normalなものなのか、それともNew Normalに対応するための一時的なものなのかは不明です。

 

(第2回に続く)

 

【参考・出典・引用】

*1 監査品質に関する報告書2021、有限責任監査法人トーマツ

*2 「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定)」、男女共同参画局

*3 「女性登用に対する企業の意識調査(2021年)」、帝国データバンク、2021年8月16日

*4 「上場企業2220社 2021年3月期決算「女性役員比率」調査」、東京商工リサーチ、2021年7月16日

*5 「2020年労働時間等実態調査集計結果」(日本経済団体連合会 2020年9月15日)


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