監査法人の人材シリーズ、第3回は2021年10月に公表された「AZSA Quality 2021/2022」をもとに、有限責任あずさ監査法人における人材の考え方や施策を見ていきます。

人材に関する監査品質指標

「AZSA Quality 2021/2022」(*1)では、監査品質に影響を及ぼす要因として有限責任あずさ監査法人(以下あずさ)が重視している定量的情報である監査品質指標(AQI : Audit Quality Indicators)が冒頭で開示されています。まずは人材に関するAQIを見ていきます。

  • 1人当たりの年間平均研修時間 67.3時間

監査品質の根幹にある人材を育成するための「3つのO」(OJT、Off-JTおよびOpportunity)の1つに位置づけられるOff-JTに関して、本部及び事業部主催の実務的・実践的な研修に加えて、デジタルスキルやオンライン環境での業務に関する研修を実施しており、2021年度の研修時間は67.3時間となっています。これは後述する年間平均執務時間2,032時間のうち約3%に相当しています。

 

  • 監査従事者の異動状況

異動 403名

出向 67名

多様な業務経験による知見、客観性、問題解決能力の向上等を目的として、異動・出向は「3つのO」の1つであるOpportunity(幅広い業務機会の提供)と位置付けられています。2021年度は本部や事業部間等、法人内の異動者数が403名、日本公認会計士協会等、外部への出向者数が67名であり、2021年度末の人員数6,173名のうち約8%が対象となっています。

 

  • 女性比率

管理職比率 13.4%

プロフェッショナル人員比率 27.2%

多様性を尊重し、インクルーシブである環境が高品質な業務や競争力の強化につながるとの考え方からインクルージョン&ダイバーシティの推進に取り組んでいるとしており、その一つとして女性活躍推進の評価指標を設定しています。2021年度の管理職における女性比率は13.4%、プロフェッショナル人員における女性比率は27.2%となっており、2023年までの目標値として管理職比率15%を掲げています。

 

  • マネージャー以上の海外赴任経験者 565名
  • グローバル対応人材 2,136名
  • デジタルマイスター 723名

加速するグローバル化、デジタル化に対応できる人材の育成を重視する観点からグローバル共通のリーダーシップフレームワークのほか、グローバルスキル研修、海外派遣プログラム、デジタル人材育成プログラム「Azsa Digital Academy」の策定等を実施しており、2021年度において、マネージャー以上の海外赴任経験者は565名、TOEIC730点以上等、一定の条件を満たすグローバル対応人材は2,136名、デジタル推進の中核となるデジタルマイスターは723名となっています。

 

  • 監査従事者の年間平均執務時間 2,032時間

アサイン調整、あずさデリバリーセンターの利用、自動化等を通じて監査業務の効率化を進め、また社内ネットワークへの接続制限など過度な長時間労働の防止する取り組みを行っており、2021年度の年間平均執務時間は2,032時間となっています。

 

  • 意識調査(GPS) 74%

働きやすい職場環境の整備の一環として、全世界のKPMGネットワークで働くすべての構成員を対象とした意識調査「Global People Survey (GPS)」を実施しています。2021年度において、あずさが最重視する「Engagement Index」(法人への自発的な貢献意欲・満足度)は74%となり、過去5年度で14%増加したとしています。