監査法人の人材シリーズ、第2回は2021年10月に公表された「監査品質に関する報告書2021」(*1、2)をもとに、PwCあらた有限責任監査法人における人材の考え方や施策を見ていきます。

人材に関する監査品質指標

PwCあらた有限責任監査法人(以下、あらた)の「監査品質に関する報告書2021」では、監査品質に関連する特定の定量情報である監査品質指標(Audit Quality Indicators 以下AQI)が別冊にまとめられています。まずは人材に関するAQIをピックアップしてみていきます。

 

  • ・職員エンゲージメント調査結果 71%

職員のモチベーションを測るため、あらたでは毎年職員エンゲージメント調査(Global People Survey/GPS)を実施しています。2021年度のGPSではCOVID19感染拡大による業務量の増加や移動制限による有給休暇取得日数の減少といった要因により「Flexibility & Wellbeing」が悪化したものの、「Visions & Leadership」等において前年度より改善したことで、前年比+3ポイントの71%となっています。

 

  • ・退職率 8%

WEF指標でもある退職率は8%となっており、2020年度の9%と比べると1ポイント改善しています。厚生労働省によると2020年の平均的な離職率は10.7%であり(パートタイム労働者除く一般労働者 *3)、あらたの退職率はそれほど高い水準ではないと言えそうです。

 

  • ・平均有給休暇取得日数 16.2日

COVID19感染拡大を受け、平均有給休暇取得日数は前年より0.5日減少して16.2日となっています。厚生労働省による調査では、2020年度の全国平均は10.1日であり(*4)、あらたの有給取得日数は一般的な水準を大きく上回っていると言えます。

 

  • ・男性の育児休暇取得率 77%

男性の育児休暇取得率は前年比10%増加の77%となっています。また2020年度の全国平均12.65%(*5)も大きく上回っており、平均有給休暇取得日数とあわせて考えると、休暇は比較的取りやすい職場環境と考えられます。

 

  • ・PwCネットワーク内での異動 102名
  • ・PwCネットワーク外への出向 16名
  • ・パートナーに占める海外赴任経験者割合 48%

異なる文化や環境での業務経験が高品質な監査につながるとの観点から、あらたでは出向や異動といった人財交流を重視しているとしています。2021年度はPwCネットワーク内での異動が102名、PwCネットワーク外への出向が16名となっており、合計人員数3,089名(2021年6月末時点)のうち約4%が出向・異動を経験していることになります。またパートナーに占める海外赴任経験者割合は48%となり、ほぼ半数のパートナーが海外経験ありとなっています。

 

  • ・監査従事者の平均研修受講時間 62.1時間

研修プログラムは、あらたの目指す人材像を実現するための成長支援の一つとして位置付けられています。2021年度の平均研修受講時間はリモートワークへの移行等の影響で前年度から15.3時間減少し、62.1時間となっています。

 

  • ・中途採用の職員数 158名
  • ・日本の公認会計士以外の資格保持者数 498名
  • ・全体に占める女性比率 33.5%
  • ・マネージャー以上に占める女性比率 17.1 %
  • ・在籍スタッフの出身国数  22か国

多様な人財がPwCの存在意義を共有し、時代の変化に柔軟に対応することが高品質な監査につながるとの観点から、ジェンダーその他、多様性を測るための指標が開示されています。2021年度においては、中途採用の職員数158名、日本の公認会計士以外の資格保持者数498名、出身国数22か国となっており、またジェンダーに関しては全体に占める女性比率は33.5%、マネージャー以上に占める女性比率は17.1%となっています。なお、前年に比べるといずれも低下または減少しています。

 

  • ・年間平均執務時間 1,851時間

AQIには記載されていませんが、人員構成・執務状況として監査従事者の年間平均執務時間が開示されています。2021年度は1,851時間となり、前年度から変動なしとなっています。