あらたの人財
続いて「監査品質に関する報告書2021」の「高品質な監査を実現するための取り組み」における「人財」を見ていきます。
ここでは、(1)目指すべき人財像の定義と目標を実現するための施策に触れたうえで、(2)グローバル共通のフレームワークであるPwC Professional、(3)採用、(4)成長支援の考え方、(5)目指すべき人財像を実現するための取り組み、そして(6) Inclusion &Diversityに対するアプローチ等が記載されています。
以下、順に見ていきます。
(1) 目指す人財像
あらたの目指すべき人財像として、「多様性の尊重と追及」「時代の変化に対応する柔軟性」「“人”を活かし、創り上げる力」の3つが定義されています。加えて人事担当パートナーから、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴うリモートワークの浸透といった状況の変化を踏まえ、“相談できる存在になる”というあらたの存在意義の出発点が人財育成の重要な要素であるとのメッセージが掲載されています。
(2) PwC Professional
PwCのメンバーに求められる行動規範はPwC Professionalと呼ばれるグローバル共通のフレームワークにより整理されており、あらたが目標とする人財の育成においては当該フレームワークを追求していくとしています。


(3) 採用
多種多様な人財を確保するプロセスである採用においては、上記PwC Professional等を採用候補者に提示し、価値観を共有できる人財を採用することが重要としています。
なお、出身国数、日本の公認会計士以外の資格保持者数等、採用に加えて多様性にも関連する2021年度の各種AQIは前年比でいずれも低下しており、これは慎重な採用活動を行った結果としています。

女性比率について、2021年度のマネージャー以上に占める女性比率17.1%に対し、2030年には30%以上とすることを目標に掲げており、これは政府が目指している30%程度(*6)という数値を意識したものと思われます。
第1回 有限責任監査法人トーマツの人材で言及したように、上場企業2,220社の女性役員比率は7.4%(*7)、大企業の女性管理職比率は5.8%(*8)となっており、これらの調査結果と比べると、あらたにおいても女性比率は比較的高いと言えます。
なお、女性がマネジメントの意思決定に参加することが重要と記載されていますが、2021年7月1日時点において、代表執行役、執行役副代表ともに男性であり、また経営会議メンバー(オブザーバー除く)の中に女性は含まれていないようです。
(4) 成長支援の考え方
目指す人材像を実現するためには、業務における経験、人材開発プロジェクトおよび研修プログラムが必要であり、OJTを中心とした実務経験、育成プログラムであるGlobal Leadership Development Programやコーチングに関する研修、また職階ごとの研修プログラム等を提供しているとしています。
① 配置・アサインメント
成長支援で重要とされる実務経験に関連し、アサインメント調整の早期化、法人全体での最適化、そして個人のキャリア構築に資するアサインメント等実現のため、2021年度よりアシュアランス・アサインメント・オフィスを設置したとしています。

② 研修
成長支援に必要な要素として各種の研修プログラムが提供されており、専門領域の研修に加えて、コーチング研修、I&Dプログラム、ビジネススキル研修、ESG研修、VRを活用した不正事例研修などを実施しているとしています。

2021年度における監査従事者の平均研修受講時間は62.1時間となり、2020年度の77.4時間から減少しています。減少要因としてはリモートワークの普及に伴う部門研修の減少と2日間のデジタル研修がアップデート研修となったことが挙げられています。
③ 多様な働き方・キャリアの実現のための検討
多様な経験に基づく異なる視点からの検討が監査の品質向上に役立つとの考えから、出向や非監査業務への従事などが推奨されており、特にパートナーへの昇格にあたっては異なる文化の経験が必要とされています。その結果、パートナーに占める海外赴任経験者割合は48%と、ほぼ半分に達しています。
具体的な人財交流として以下が挙げられています。
- ・海外PwCネットワークとの交流(赴任および受け入れ)
- ・品質管理本部など他部門への異動
- ・日本公認会計士協会等への出向
- ・事業会社への出向
- ・非監査業務・アドバイザリー業務への従事
またPwC退職者のネットワークPwC Alumniからのフィードバックも重視しているとしています。
2021年度においては、PwCネットワーク内での異動が102名、ネットワーク外への出向が16名となっています。ネットワーク内の異動者数は2020年度138名から36名減少となっていますが、出向期間による年度ごとの変動であるとのことです。


④ Performance Management / 評価
パートナーの人事評価は毎年作成する個人の業務計画書に基づいて行われる一方、職員の人事評価はPwC Professionalに対応して定義されたスキル・能力の習得状況や部門ごとの業績目標の達成状況等によって評価されるとしています。いずれも品質が最重要項目とされています。
なおパートナー含めた360度評価や、職員エンゲージメント調査による職員からあらたの評価なども行われています。
(5) 目指すべき人財像を実現するための取り組み
実施している取り組みとして、職員エンゲージメント調査(GPS)、働き方改革と個人のウェルビーイングが挙げられています。
2021年のGPSでは前年比3ポイント上昇の71%となっていますが、Flexibility & Wellbeingの項目ではコロナウイルス感染症拡大による監査リスクに対応するための業務量の増加と職員への負荷増大、また移動制限による有給休暇取得日数の減少などにより前年度より悪化したとされています。

先述の通り、監査従事者の平均執務時間は2020年度、2021年度ともに1,851時間となっています。業務量の増加、職員の負荷増大およびリモートワークの通年化とそれに伴う対応といった増加要因に対して、働き方改革、残業モニタリングおよび効率化等の施策を実施したことにより、労働時間合計では相殺されたのかもしれませんが、GPSでは悪化を示しているようです。
なお2021年の平均執務時間1,851時間に対して、日本経済団体連合会の調査による2019年の総実労働時間は2,022時間(管理監督者)、2,000時間(一般労働者)(*9)であり、有限責任監査法人トーマツ同様、あらたの労働時間はそれほど長くはなさそうです。
働き方改革と個人のウェルビーイングとしては、テクノロジーを活用したリモートワーク、アサインメントの最適化を含む業務量や残業の管理に加え、同性婚のケースでも適用される育児休業制度や育児短時間勤務制度、男性の育休取得目標100%、また各種の制度を利用できるカルチャーの醸成等が挙げられています。
上記の結果、2021年度のAQIでは退職率8%、平均有給休暇取得日数16.2日、および男性の育児休暇取得率77%となっています。これらの数値を厚生労働省による各種調査結果(退職率10.7%(*3)、有給休暇取得日数10.1日(*4)、男性の育児休暇取得率12.65%(*5))とあわせて見ると、いずれも一般的な水準を上回っており、数字上は良好な労働環境であることが想定されます。

(6) Inclusion & Diversity(I&D)
PwC Japanグループではジェンダー、ナショナリティ、ディサビリティ、LGBT+、働き方改革という5つの領域に焦点を当ててI&Dを推進しており、以下のような施策、取り組みが紹介されています。
① ジェンダー:国連ウィメンによる啓発活動’HeForShe’を推進する30団体への選出、アンコンシャスバイアス研修の提供等
② ディサビリティ:障がい者アスリートの支援プログラム「Challenged Athlete Program」、障がいのあるスタッフで構成された「Office Support Team」の強化等
③ LGBT+:PwC全体に向けた研修の実施、東京レインボープライドへの協賛等
④ ナショナリティ:PwCのグローバル・モビリティ・プログラムを通じた人財育成・キャリア開発の強化、日本と海外の赴任促進等
⑤ 働き方改革:「成功する人はウェルビーイングを軽視しない。成功する組織はそこで働く人々がウェルビーイングを追求できるような環境を提供する」との考えのもと、デジタル化、リモート化、その他各種制度の導入等
なおこれらの取り組みを受けて、2019年から継続的に健康経営優良法人に認定されているとしています。
(第3回に続く)
【参考・出典・引用】
*1 監査品質に関する報告書2021、PwCあらた有限責任監査法人
*2 監査品質に関する報告書2021 別冊 監査品質指標、PwCあらた有限責任監査法人
*6 「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定)」、男女共同参画局
*7 「女性登用に対する企業の意識調査(2021年)」、帝国データバンク、2021年8月16日
*8 「上場企業2220社 2021年3月期決算「女性役員比率」調査」、東京商工リサーチ、2021年7月16日
*9 「2020年労働時間等実態調査集計結果」(日本経済団体連合会 2020年9月15日)
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