国税庁はこのほど「令和2年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。提出件数は11,331件となり、毎年伸びています。また、令和4年度税制改正では、事務負担軽減の観点から調書の提出期限を緩和するなどの見直しが行われました。

国外財産調書の提出状況

5,000万円を超える国外財産を保有する者は、翌年の3月15日までに当該国外財産の種類、数量及び価額等を記載した「国外財産調書」を提出しなければなりません。

国税庁はこのほど「令和2年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。

それによると、国外財産調書の提出件数は11,331件、財産総額は4兆1,465億円となり、財産総額は前年をやや下回ったものの、提出件数は毎年伸び続けています。

財産の種類別の構成比では、有価証券が最も多く全体の51%を占め、次いで預貯金、建物、貸付金、土地の順となっています。

加算税の加重・軽減措置の適用状況

国外財産調書には、適正な提出を確保するためのインセンティブ措置として加算税の軽減・加重措置が設けられています。

調書の提出がない場合又は提出された調書に記載のない国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときには、加算税を5%上乗せされます。

一方で、提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときには、加算税が5%軽減されます。

また、令和2年度税制改正で、国外財産を有する者が、税務当局から国外財産調書に記載すべき国外財産に関する資料(取引明細などのフロー情報等)を指定された期限(60日を超えない範囲)までに提示・提出をしなかった場合には、加算税の加重・軽減措置を以下の通りとする特例が創設されました。

・加算税の軽減措置は適用しない

・加重措置については、加算する割合を5%→10とする。

この取扱いは、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に取得した相続国外財産に対する相続税について適用されます。

国税庁の発表によると、令和2事務年度における所得税及び相続税の実地調査の結果、特例措置を適用した件数及び対象となった増差所得等金額は次のとおりです。

国外財産調書・財産債務調書の見直し

令和4年度税制改正では、納税環境整備の一環として、以下の通り国外財産調書及び財産債務調査の提出制度が見直されました。

(1)提出義務者

財産債務調査の提出義務者について、現行の財産債務調書の提出義務者のほか、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者も提出義務者とされました。これにより、財産が10億円以上の者は、所得基準に関わりなく提出が義務付けられます。

(2)提出期限

国外財産及び財産債務調査の提出期限については、これまでの「その年の翌年の3月15日」から「その年の翌年の6月30日」に延長されました。これは提出義務者の事務負担軽減の観点から見直されたものです。

(3)提出期限後に調書が提出された場合の宥恕措置

提出期限後に国外財産調書・財産債務調書が提出された場合において、その提出が、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとされました。

よって、調書未提出者に対しては、従来より厳格な対応が取られることとなります。

(4)記載事項

財産債務調査への記載を省略できる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準が100万円未満から300万円未満に引き上げられました。

 

これらの改正のうち、⑴⑵⑷については令和5年分以降の調書について適用され、⑶の宥恕規定については令和6年1月以降からの適用となります。


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