華やかそうに見える広報ポジション。IPOにおいてはIRなど重要な対応事項が多数増えます。これは、広報担当者だけで完結するものではありません。広報は社内で情報を集めなければ発信すべき情報が入手できません。また、従業員が勝手に情報発信すると、会社の方針と異なってしまうなどの事故になる可能性があります。従業員が情報の取り扱いについて協力することがとても重要です。IPOにおける広報の重要性と戦略について説明します。
目次
- IPO時における広報の重要性
- IPOに向けた広報で必要なこと
- まとめ
1.IPO時における広報の重要性
①IPOで広報は重要なのか
IPOのチャレンジにおいて広報は重要な変革ポイントです。やるべきことが増え、やってはいけないことも出てくるからです。例えば、やってはいけないことでいえば、上場申請後には「沈黙期間」をつくり、情報発信を迂闊にしない社内体制を作ることがあります。イケイケなSNS勝負のベンチャーなどで従業員の発信なども盛んな会社や、営業においてメディアやSNSの賑わいが武器の会社などは段取りを入念にしないと、会社の方針と異なる情報発信をしてしまうなど事故にもなりえますし、簡単に統制を取ることができない大きな課題になりがちです。
②IPOは情報発信の潮目
IPOをするということは、開かれた会社に変わるということ、これはマザーズなどだと一般投資家、すなわち、誰もが「投資家=株主」になれるということです。クローズドな企業経営からオープンにしていくことが必要となります。そして、企業を取り巻く環境は変化が著しい時代です。投資家からは、的確な投資情報を入手するできることが求められます。経営者は時価総額の最大化にコミットし、最新の会社情報を正確、かつ、タイムリーに提供することが必要となります。
このために、IPOをするとIR(Investor Relations、投資家向け広報)が必要となります。
制度的な情報開示には、有価証券報告書、四半期報告書、決算短信、招集通知、コーポレート・ガバナンス報告書、内部統制報告書、適時開示資料があります。
そしてIPOにおける広報は、単にIRの必須資料を開示するだけでは足りません。
③IRと広報(PR)の関係
そもそも、広報はPR(Public Relations)として、自社と社会とをつなぐ窓口の存在で、商品やサービスの販促、企業のイメージアップなどを目的としても必要とされます。IRもこのPRの一環です。日本では、IRと広報を分けて考えられがちですが、作業的に区分が出来てもゴールとしては同じであり、情報発信するという大枠も同じであるため、本来は一体として存在すべき関係にあります。また、制度対応としてIRも必須資料だけを出していても投資家は情報として満足しません。情報発信として必須とされていない商品情報などの細やかで定性的な情報なども求められる傾向にあります。
④体制の必要性
IPOにおける広報は一人では完了し得ないボリュームですので、体制づくりが重要です。採用や業務体制を構築することが必要となるため、その場しのぎでは対応しきれません。また、上場間際に連動すべきIR情報を含むセンシティブな情報も取り扱うなど、守秘義務契約を巻いたとしても業務委託による広報の外注は好ましくありません。