電子書籍の潮流

上述のとおり、目下、本の市場全体を牽引する電子書籍。
その歴史は、まだ30年ほど。
1996年に「電子書店パピレス」(現在は、電子書籍レンタルRenta!に統合)が登場して本格手な歩みを始めました。

4年後の2000年にはeBookJapan、楽天ブックスと現在まで続く老舗が誕生。
以降、着実に規模の拡大は進み、直近では出版市場全体の3割近くを占めるまで至っています。
電子書籍の中で、著しく伸長しているのが電子コミック。一方、紙と同様厳しい状況が続いているのが雑誌。改めて、コミックの力強さが伺えます。

単位:億円
出典:日本の出版統計/公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所

ビジネスとしての本の可能性

市場の傾向に続いて確認しておきたいのがビジネスの特性です。
よく知られているとおり、本にまつわるビジネスには、旧来より出版業界を支えてきた「再販制度」「委託制度」があります。

目的は、文化としての本の価値、それを生み出した著作者の権利、そして社会の一機能としての書店を維持、守るためにあります。特に委託制度による返品保証は、少部数でさまざまな本を並べることを可能にする役割を果たしています。

しかし、一方でこうした制度が2000年以降顕著になったデジタル化の波にうまく適合しづらくなってきている側面もあります。

例えば、電子書籍は書店側に「物理的な」在庫が発生しません。結果、再販維持ができないという事情が生まれています。また、登場当初は機能面で難のあった電子書籍リーダーやタブレット端末などがより使いやすくなったこともビジネス形態へ少なくない影響を及ぼしています。

では、このままシンプルに電子化だけが進んでいくと考えられるのか。
リアルな書店には可能性が見通せないのか。
単純にそうなるとは言い切れない事例も昨今登場しています。

これまでの書店の概念を覆す事例を2つ、続けてご紹介しましょう。

新しい書店のスタイル

渋谷○○書店
https://note.com/shibuya_books/

「シェア型書店」というまさかのスタイルです。
都内を中心に書店の大型化が進む中、自社専有ではなく、様々な個人に棚を貸し出すという驚きの形態です。
費用は月額4,950円。わずか5,000円ほどで渋谷という一等地に自分の“本屋”が出せる。
まさに旧来からある書店のあり方を覆したモデルです。

 

バーチャルジュンク堂書店池袋本店/池袋ミラーワールド
https://www.mworld.jp/

昨年登場した「バーチャルジュンク堂書店池袋本店」です。
書店=「知」や「人」と出会えるコミニケーションメディアと位置付け、新しい書店のあり方を提言しています。
本には独自の世界観、登場人物やストーリーなどの様々な魅力が詰まっています。
バーチャルジュンク堂では、読書にとどまらず、動画や音声、さらにはAI店員などを駆使して本の新たな魅力を引き出し、これまでにはない体験を提供しています。

 

企業の寿命が平均で約18年と言われるようになりました。
1つのビジネス形態を永続的に続けることはもはや難しいでしょう。
しかし、裏を返せば成熟化していると言われている業種や業態においても、大いにチャンスがあるとも言えます。
ぜひ、歴史あるビジネスに変革の可能性がないか検討してみてください。
ビジネスのあり方を変えてしまうような結果につながるかもしれません。


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