連載、「酒井克彦の『税金』についての公開雑談」の第123回です。
東名高速道路での「あおり運転」事故をめぐり、横浜地裁は令和4年6月6日、被告人に対し、差戻し前と同じ懲役18年を言い渡しました。あおり運転を発端として夫婦2人が死亡した東名高速夫婦死亡事故を契機に、あおり運転の取り締まりが強化されています。今回は、「あおり運転」ならぬ「あおり調査」を考えます。

妨害運転罪の創設

平成29年6月に発生した東名高速夫婦死亡事故は、あおり運転の厳罰化に繋がった事件の一つといえるでしょう。当時、警察庁は「あらゆる法令を駆使して厳重な捜査を徹底する」と公表していましたが、従来の道路交通法ではあおり運転そのものを罰する規定がなかったため、刑罰の軽い暴行罪などによる検挙が行われていました。

その後、あおり運転が社会問題としてクローズアップされたことに伴い、令和2年6月10日、道路交通法の一部を改正する法律が公布され、あおり運転を処罰の対象とする「妨害運転罪」が制定されました。しかし、どのような行為が「妨害運転」となるのかを正確に把握されている方はまだ多くないようですから、政府には更なる広報・周知が求められるところでしょう。

上記改正では、あおり運転そのものが「妨害運転罪」と規定されています(道交法117の2の2十一)。改正道路交通法は同年6月30日から施行されていますから、現在、あおり運転は、すでに妨害運転罪による取締り・処罰の対象となっています。

筆者はよく登山をするのですが、登山道でも「あおり登山」をする方がいます。熊鈴(熊除けの鈴)をチャリンチャリンと大きく鳴らしながら、猛烈なスピードで前の登山者を追い抜いていく登山者がいるのです。きっと、おトイレでも我慢しているのでしょうが、あまり気持ちのよいものではありません。