あおり調査

さて、税務調査において非違事項が見つかった場合、調査終結の段階で、税務当局から「修正申告の勧奨」がなされることが多いと思われますが、その際に、「修正申告書に印鑑を押さないとさらに調査を続けますよ」などという言い方をして、税務職員が修正申告の提出を「あおる」行為は許されるのでしょうか。

この点、病を患っていた納税者に対する税務調査の違法性が争われた事例として、福岡高裁宮崎支部平成12年6月13日判決(税資247号1175頁)があります。この事例では、納税者X(原告・被控訴人)の長男により署名捺印された修正申告書に基づく修正申告が、納税者の真意に基づくものとは認められないとして、かかる修正申告による納付債務の不存在確認請求が認められました。

Xは裁判において次のような主張をしています。

Xは、食事も不規則、睡眠も不十分で、緊張の余り体調も悪化していたが、翌25日、N税務署に呼ばれて赴いたところ、係官から平成元年分から平成5年分までの所得税の修正申告をするよう指示され、その修正申告額を示されたが、余りの額の大きさに呆然となり、「こんな筈はない。こげんな金はとてもじゃないが払える金額じゃない。」と断ったのに、執拗に修正申告書の提出を迫り、揚げ句の果てに、「本当は7年のところを5年にした。」とか、「サインできないなら何回でも調査に入りますよ。夜でも飛んでいきますよ。そしたら税額がもっと増えますよ。」などと脅かされるなど、長時間にわたり強要を受けたため、Xは最悪のストレス状態となり、声もやっと出る状態で、顔色も真っ青になり、眼瞼摘出手術を受けた直後で衰弱しており、低血糖神経症等によって意識も朦朧となって、肉体的、精神的に混乱した状態になった。

Xの主張の全てが認定されているわけではないものの、福岡高裁宮崎支部判決は、Xやその家族らが「税務調査は威圧的であるとの印象をもった」ことは認定しており、また、Xの主張について、「いささか誇張に過ぎる嫌いがあるとはいえ、Xの体調が非常に悪く、〔筆者注:担当係官が〕署名をさせるのも躊躇する程の状態であったこと」も事実であるとしています。

また、同判決は、Xのことを、「当時体調が思わしくなく、税務知識も左程あるともいえず、しかも売上について裏帳簿を作っていたことが発覚した弱みのある被控訴人」とも表現しており、立場的に担当係官より弱い立場にあったことを判断材料の1つとしているようにも見受けられます。

このような「あおり調査」が許されていいはずはありませんね。


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