去る7月10日の参議院選挙では自民党が大勝いたしました。ご承知のように、一部の野党は、参院選に向け、インボイス制度廃止を政策として掲げておりましたが、自民党が圧勝したことで、適格インボイス制度の導入は、予定通り実行されることになりそうです。
財務省・国税庁の悲願であるインボイス制度
消費税は平成の開始とともに導入されましたが、それ以前の「一般消費税」の不採用(昭和54年)、「売上税」法案の廃案(昭和62年)というトラウマがあってか、平成元年の消費税導入に当たり、事業者に余計な負担や費用をかけるのは好ましくない、という配慮から、仕入税額控除の方法として、インボイス方式ではなく、帳簿方式が採用されました[1]。
しかし、仕入れの相手先が課税事業者かどうかの確認が要求されない(というか、できない)帳簿方式[2]は、免税事業者からの仕入れについても仕入税額控除が認められ、また、事業者に益税が生ずる問題が指摘されており、課税当局から見て、現在まで多額の税収ロスがあった事実は否めません。
その点からも、今回の制度導入には、約30年前に課税当局がなしえなかった悲願を達成するという、当局者の強い『意思』が感じられます。
[1] 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂)813頁
[2] 世界4大会計事務所の1つ、EYの “World Worldwide VAT, GST and Sales Tax Guide 2022”(https://www.ey.com/en_gl/tax-guides/worldwide-vat-gst-and-sales-tax-guide)では、VAT(付加価値税)及び類似の制度を採用する租税管轄権は世界に142あるとのことだが、筆者の知る限り、仕入税額控除においてインボイス方式以外の方法を採用する租税管轄権は、我が国を措いて他にはないと思われる。