免税事業者にとっては「革命」勃発?

ところで、今般予定されている適格インボイス制度の最大の問題は、基準期間の課税売上高が1千万円に満たない免税事業者であっても、得意先との関係によっては、適格請求書発行事業者の登録が事実上強制され、その結果、消費税の納税義務を負うことにあります。

このことは、本年1月19日付[3]で、財務省、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、国土交通省が連名で公表した、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」[4]のQ7で、「仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討していますが、独占禁止法などの上ではどのような行為が問題となりますか。」という問いが設けられていることに象徴的に表れています。この場合、売手である中小事業者(免税事業者)と相対する買手(課税事業者)は、一般的に、売手に対して取引上優越する立場にあるので、同Q7では、

1. 買手が、仕入先から商品を購入する契約をした後において、仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となる

2. 買手が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となる

と述べる一方、

3. 買手が、インボイス制度の実施後の免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題とならない

4. 事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由

5. 課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することがあるが、このような要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題とならない

とも述べており、要は、高圧的な姿勢で交渉等に臨む、あるいは紋切り型に取引を停止する等は好ましくなく、「取引先との交渉に際し、独占禁止法や下請法、もしくは建設業法に抵触しないようにソフトに対応しなさい。」という当局の意向が見て取れます。

このことは、同Q5では、「課税事業者は、免税事業者からの仕入れについて、インボイス制度の実施に当たり、どのようなことに留意すればいいですか?」という問いに対し、回答後段で、「消費税の性質上、免税事業者も自らの仕入れに係る消費税を負担しており、その分は免税事業者の取引価格に織り込まれる必要があることにも、ご留意ください。(下線筆者)」と述べていることからも窺われます。

特に、下線部分については、免税事業者はもとより仕入税額控除ができないので、その売価に税額を転嫁することで、少しでもその影響を緩和する必要があるため、買手はその間の事情を斟酌して、免税事業者との交渉に臨んで欲しいというメッセージと解されます。

確かに、令和5年10月1日以降、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは、令和8年9月30日までが80%、同年10月1日以降令和11年9月30日までが50%の金額の仕入税額控除が認められますので、買手である課税事業者が、いきなりスパッと仕入先を見直すということはないと思われますが、いずれにせよ、令和11年10月1日以降は、免税事業者からの仕入れ税額控除は全く認められなくなりますので、免税事業者もそれなりの覚悟が必要と思われます。

冒頭に述べたとおり、買手からの登録の要請や値下げ交渉は近い将来必ずあると思われます。

また、適格請求書発行事業者として登録すれば、消費税の申告・納税からは逃れられません。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、免税事業者にとって、インボイス制度導入は「革命」です。

「革命」からは逃れられません。

したがって、次は、覚悟を決めてどのタイミングで登録すべきかを検討すべきと思われます。

なお、いうまでもないことですが、以上の議論は、買手が課税事業者である場合に限られますので、免税事業者で、一般消費者向けのみの事業[5]を営む者(いわゆるB2C)には、適格事業者の登録は全く任意となります。


[3] 既に本年3月8日付で改定版が出されている。

[4] https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html

[5] ただし、例えば、飲食店の場合は、事業者の顧客が接待用に利用する場合があり、その場合適格インボイスの交付が求められる可能性があるため、適格事業者の登録は慎重に検討する必要がある。


個別転職相談(無料)のご予約はこちらから

 

最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。

 

◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします

メルマガを購読する


(関連記事)

ポイントも課税資産譲渡等の対価の額に該当するとされた事例【消費税/請求棄却】

非嫡出子の母が管理していた贈与による預金は相続財産に含まれないとされた事例【相続税/一部取消し】

太陽光発電の課税仕入れ期間は、それぞれの機器ごと?設備全体で?

フェラーリは、時の経過により価値が減少する資産である?ではない?

キャッシュバックは課税仕入れの対価に該当するか?

▶その他関連記事はこちら