元国税審判官が解説 公表裁決から学ぶ税務判断のポイント、連載第49回目です。
請求人が、インターネット利用申込者に対し、独自に設定したキャッシュバックにより行った金員の支払いは、課税仕入れに係る支払い対価の額、又は売上げに係る対価の返還等にも該当しないという判断が示されました。今回はその裁決例について解説します。

国税不服審判所令和2年3月10日裁決(T&Amaster No.871 2021年2月22 日 20~26頁。 裁決事例集未掲載)

1.事実関係

本件は、通信回線販売取次業を営む審査請求人(請求人)が、請求人のホームページを介してインターネットサービスに係る申込みを行った顧客に対しキャッシュバックした金員を課税仕入れに係る対価の額に含めて消費税等の確定申告を行ったところ、原処分庁が、当該金員は顧客から受けた役務の提供に対する対価とは認められず、課税仕入れに係る対価の返還には該当しないなどとして、消費税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人がその全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、通信回線販売取次業務等を目的とする法人であり、電子通信事業者であるA社のインターネット回線販売事業(本件サービス)に関し、同回線の一次販売代理店であるB社との間で、委託者をB社、受託者を請求人とする契約(本件契約)を締結し[1]、業務委託手数料を受領していたところ、A社が設けた販売キャンペーンとは別に、代理店独自のキャンペーンとして、請求人のホームページを介して本件サービスの申込みを行った顧客(本件顧客)に対し、金員(本件キャッシュバック)の支払いを行っていた。


[1] A社が代理店向けに作成したガイドラインには、代理店業務の全部又は一部を再委託する場合には、同ガイドラインの内容を再委託先にも適用すること、代理店独自のキャンペーン等を行う際には、提供開始前にA社に通知する等の記載がある。また、本件契約には、本件サービスに関し、請求人は、顧客との契約締結の代理権又は代理人の地位を与えるものではないことを確認了承するとの記載がある。