4.審判所の判断
(1)争点2について
A. 法令解釈
事業者が収受する経済的利益が消費税の課税要件としての資産の譲渡等における「対価」に該当するといえるためには、事業者が収受する経済的利益と事業者が行った当該個別具体的な資産の譲渡等との間に対応関係があること、換言すると、当該個別具体的な資産の譲渡等があることを条件として、当該経済的利益が収受されたといいう対応関係があることが必要であるものと解される。
そして、消費税法30条6項が、課税仕入れに係る支払い対価の額について、対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額である旨規定していることからすれば、仮に金銭の支払いを行ったとしても、他の者が事業として資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は役務の提供をしていなければ、同条1項が規定する課税仕入れに係る支払い対価の額とはならないと解される。
B. 当てはめ
本件キャッシュバックは、本件顧客が請求人のホームページを利用して、インターネットの申込みを行い、A社が本件顧客を利用者として登録し、A社による回線工事が行われた場合に、請求人から支払われるものである。すなわち、本件顧客は、①請求人のホームページを介してインターネットの申込みを行うこと、及び②本件キャッシュバックの振込先口座の登録をすることのみを条件として、請求人から本件キャッシュバックを受領するものである。①は本件顧客の自由な意思に基づき一方的に行われるものであり、このことをもって請求人が本件顧客から役務の提供を受けているとは認められず、②は本件キャッシュバックの受領口座を指定するに過ぎないものであるから、請求人に対する資産の譲渡等であるとは認められず、課税仕入れに係る支払い対価の額には該当しない。
C. 請求人の主張の排斥
請求人は、上記31(1)のとおり主張するところ、本件顧客が行う日程調整等は、本件顧客がインターネットを利用するために行うものであって、本件顧客が請求人から本件キャッシュバックを受領するために格別に行うものではない。そして、請求人がB社から業務委託手数料を受領するのは、請求人が本件契約に基づき、所定の業務を行い、同手数料の支払い条件を満たしたことによるものであるから、当該業務委託手数料と本件顧客が行う作業とは対応関係がない。したがって、請求人の主張には理由がない。
(2)争点3について
A. 法令解釈
「売上に係る対価の返還等」とは、事業者が、自らの行った課税資産の譲渡等について値引き等をすることにより、その税込価額の全部又は一部を返還等することをいうものと解される。
また、本件通達の定めは、事業者が販売数量や販売高に応じて取引先に支払う金銭は、販売奨励金その他の名称のいかんを問わずその本質は、売上代金の一部の返戻額であることに相違ないことから、売上げに係る対価の返還等に該当するものであることを明らかにしたものであり、当審判所においても相当であると認められる。
B. 当てはめ
請求人が本件契約に基づいて行う課税資産の譲渡等の相手方は、業務の委託者であるB社であり、課税資産の譲渡等の対価を受領するのはB社からである。
すなわち、請求人はB社に対して、委託業務という役務の提供を行っているが、本件顧客は、A社からインターネットの利用サービスを受けているのであって、これらの役務は全く別個のものであり、請求人が本件顧客に対して何らかの課税資産の譲渡等を行い、その対価を受領しているのではない。
請求人が本件キャッシュバックを支払うことは、B社から受領する業務委託料を計算根拠としてなされているものではない。
そして、本件キャッシュバックは請求人が独自に支払うものであり、請求人がB社から受領した業務委託料を返還等しなければならないとする根拠も見当たらない。
以上から、本件キャッシュバックは、請求人が自らの行った課税資産の譲渡等について値引き等をすることにより返還した対価の額とは認められない。
C. 請求人の主張の排斥
請求人は、上記3(2)のとおり主張するところ、上記②のとおり、本件キャッシュバックは、請求人が値引き等をすることにより返還した対価の額とは認められず、また、本件通達のいう販売奨励金は、その本質が売上代金の一部の返戻額であるから売上げに係る対価の返還等に該当するというものであるところ、請求人は本件顧客に対して課税資産の譲渡等を行っていないのであるから、請求人の主張には理由がない。



