適格インボイス制度がスタートすると、仕入先より誤った請求書等の交付を受けた場合の対応が問題となります。この点につき、インボイスQ&Aの内容を検討します。

「インボイス」が間違っていたらどうするの?

令和元年10月より消費税の軽減税率が導入されましたので、特定業種[1]に限られるとはいえ、請求書の記載誤りのうち、重要と思われるものは、適用税率(標準税率か、軽減税率か)の誤りと思われます。

周知のとおり、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入される令和5年10月1日までは、区分記載請求書等保存方式による仕入税額控除が認められます(平28改正法附則34②、③)。

軽減税率導入以降の区分記載請求書等には、発行者の氏名又は名称、取引年月日の他、取引内容として(1)軽減税率対象品目である場合はその旨、取引金額については、(2)税率区分ごとの合計金額の記載[2]が求められます。

しかし、仮に事業者から交付を受けた請求書等において、(1)(2)の部分に誤りがあった場合には、買手側の事業者は、売手側の事業者に請求書等の再発行を依頼することなく、自ら、事実に基づき請求書等に追記する[3]ことで、仕入税額控除が認められるとされています。

ただし、消費税の適用税率誤りについて、上記の「追記」で対応可能かというとそうではなく、国税庁が令和元年11月(令和2年1月更新)に公表している国税庁資料(「事業者の皆様へ(~区分経理から消費税申告書の作成まで~)」)[4]10頁によれば、「例えば、誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシート[5]を受領した場合には、取引先に対して『取引の事実』に基づくレシートの再交付を依頼するといった対応が必要になります。」とし、同頁左下の事例に係る吹き出しで、「適用税率の誤りによる税込対価の額の誤り→『追記』は不可」としているため、税率の適用誤りについては、「追記」による方法ではなく、あくまで請求書等の再交付を求めるという対応が必要となります。

しかしながら、買手が売手に区分記載請求書等の再交付を依頼しても受け付けてもらえない場合の対応として、上記国税庁資料11頁は、かかる事態が、「請求書の(再)交付を受けられなかったことについて、やむを得ない理由がある時」[6]に該当し、請求書等の保存がなくても「帳簿のみ保存」により仕入税額控除の適用を受けることができるとしています。

以上はあくまで、現行制度下における取扱いであり、適格インボイス制度導入後については、「消費税の仕入れ税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」平成30年6月(令和4年4月改訂)[7](以下「Q&A」)に具体的な説明があるため、以下検討します。


[1] 現行法上消費税の軽減税率(6.24%)が適用されるのは、①飲食料品の譲渡、 及び②新聞の定期購読契約に基づく譲渡に限られる(平28改正法附則34①)。

[2] その他の区分記載請求書等の記載事項には、「請求書等受領者の氏名又は名称」がある。

[3] 請求書等に追記することで仕入税額控除が認められることにつき、熊王征秀/渡辺章『逐条放談・消費税のインボイスQ&A』(2022年・中央経済社)108頁では、「熊王 :区分記載請求書は、ぬるま湯の期間の暫定措置です。領収書、請求書に買手が書き足していいなんていう取扱いが法律に書いてあること自体がそもそも異常なことだと思います。渡辺:この取扱いは、ゲスな言い方をすれば『書類を改ざんしていい』と言っているようなものですね。」と述べている。

[4] https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/sakusei_nagare/00.pdf

[5] 国税庁資料は、飲食料品業を前提とした書振りとなっており、取引の結果顧客に交付する帳票を総称してレシートと呼んでいると思われる。

[6] 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送(公共交通機関特例)等、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なものは、適格請求書の交付義務が免除される(新消令70の9②)。

[7] https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_invoice_mokuji.htm

適格請求書等保存方式に関するQ&Aによる手続き

(1)売手側が誤りに気付いた場合

Q&A 問29では、「交付した適格請求書の記載事項に誤りがあった場合、何か対応が必要ですか。」という問いに対し、「売手である適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書(電磁的記録により提供を行った場合も含みます。)の記載事項に誤りがあったときは、買手である課税事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければなりません(新消法57の4④⑤)」と回答しています。

また、交付した適格請求書等に誤りがあった場合に交付する修正した適格請求書等の交付方法については、同Q&A 問30で、次の2つの方法を明示しています。

1. 誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項の全てを記載したものを交付する方法

2. 当初に交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したものを交付する方法

1.の方法は、正しい請求書を再交付するイメージです。

Q&Aには明示されていませんが、実務的には、前の取引を取消す所謂赤伝(クレジット・ノート等)[8]を交付し、当初の適格請求書をいったん取消す手続きが必要と思われます。

すなわち、最後に交付された書類(若しくは電子データ。以下「書類等」)が、正式な1つの適格請求書を構成すると解されます。

これに対し、2の方法は、当初の(誤った)請求書をそのまま生かし、別途、当初の請求書との関連性を明確化した文言を記載し[9]、当初の請求書との正誤関係などを示す新たな適格請求書を交付することになると思われます。

この場合は、2組の書類等で、1つの適格請求書を構成するものと解されます。

なお、デパート等買手が交付する仕入明細書等を適格請求書とみなすケースについて、問29【令和3年7月改訂】は、「買手である課税事業者が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けたものについても、仕入税額控除の適用のために保存が必要な請求書等に該当しますので(新消法30⑨二)、買手において適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手である適格請求書発行事業者に確認を求めることも考えられます[10]

この場合は、売手である適格請求書発行事業者は、改めて修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなくても差し支えありません。」としています。

(2)買手側が誤りに気付いた場合

Q&A 問76では、「記載事項に誤りがある適格請求書の交付を受けた事業者が、その課税仕入れについて仕入税額控除の適用に係る請求書等の保存要件を満たすために必要となる対応について教えてください。」という問いに対し、「買手である課税事業者は、交付を受けた適格請求書又は適格簡易請求書(電磁的記録により提供を受けた場合も含みます。)の記載事項に誤りがあったときは、売手である適格請求書発行事業者に対して修正した適格請求書又は適格簡易請求書の交付を求め、その交付を受けることにより、修正した適格請求書又は適格簡易請求書を保存する必要があります(自ら追記や修正を行うことはできません。)(下線筆者)」と回答しています。

仕入明細書等の取扱いについては、上記(1)の記載のとおりです。

ところで、適格請求書等の再交付について、同一課税期間内に再交付されれば何も問題ありませんが、その発行期限や課税期間をまたいだ時の取扱いについては、Q&Aには一切記載がありません。

私見ですが、課税期間をまたいだ時の取扱いについては、消費税法上は、売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除(法38)及び仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入税額控除税額の調整(法32①④)の規定に準じた取扱いになると思われます。


[8] ここでいうクレジット・ノート等が適格返還請求書(Q&A 問27参照)に相当するか否かについて、Q&Aでは明示されていない。

[9] Q&A 問30の例では、「○年○月○日付4月分請求書について、下記のとおり誤りがありましたので、修正いたします。」と記載した上で、正しい売上高及び消費税額等と誤った売上高及び消費税額等を対比させて明示している。

[10] 前掲注(3)109頁では、「渡辺:この取扱いは、ものすごく画期的だと思いますね。インボイスの修正は売手側しかできないものと思っていましたが、買手側でも修正ができることになります。」と述べている。


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