前回は電子帳簿保存法上の4つの区分について説明しました。
今回は今後どの制度を利用するのか検討するにあたって、これまで電子帳簿等保存制度がどの程度利用されて来たのか、企業規模別の利用状況や売上高別の電子データで帳簿を作成している割合などを検証し、今後の対応方法を読み解きます。
【電子帳簿等保存制度の利用実態】
電子帳簿等保存制度は,どの程度利用されているのでしょうか。
2021年12月までの制度では,帳簿・書類について事前承認を得なければ書面に代えて電子データで保存することができなかったことから、その承認件数でおおよその利用割合を伺い知ることができます。
下の表をご覧ください。
(B)/(A)の割合は承認件数を納税者数で単純に割ったものであり、複数の承認を一納税者が受けている場合もあることから利用割合ではありませんが、電子帳簿等保存制度は資本金1億円以上等の大企業では7割強と多くの企業で利用されていることがわかります。
この承認は帳簿等の全部又は一部についての承認申請ですので、多くの企業が帳簿の一部または全部を電子データで保存していることが分かります。
一方、税務署所管法人の中小企業では5%弱と一部の企業でしか利用されていないようです。
さらに個人事業者にあっては、1%強とごくわずかしか利用されていないというのが現状です。
したがって、事業者の方や税理士でも電子帳簿保存法自体をご存じないという方が多いのは、この実態を表していると言えるでしょう。
しかし、これからは強制適用の電子取引の電子データ保存を含めデジタル化が一気に進むことから、知らないでは済まなくなったと言えます。
次に事業者の売上高別での電子データで帳簿を作成している者の割合について見てみると、売上高1千万円超では6割程度以上ですが、1千万円以下でも約半数近くの者が電子データで帳簿を作成しています。
実態としては中小事業者(個人を含む)でも電子的に帳簿を作成している者が相当程度の割合存在しているほか、雇用的自営と呼ばれる事業者も増加傾向にあります。
ウーバーイーツ(業務委託契約)、SE、外交員など、使用従属性の高い自営業主が増え申告件数も増加しており、自営業主の中でも4割程度を占めています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大において、中小・小規模事業者への給付金の支給や融資に際し、売上や資産・負債等の状況が適切に記録されていないため申請に手間取るなど、日々の適正な記帳の重要性を認識させられる経験をしました。
近年普及しつつある手頃な価格(安価)で使い勝手のよいクラウド会計ソフトを活用することにより、小規模事業者であっても大きな手間や費用をかけずに電子データで正規の簿記の原則に基づく帳簿書類の作成が可能な環境が整ってきています。
このような現状を踏まえれば、中小・小規模事業者の経理体制に応じた緩やかな保存要件を用意することにより、電子帳簿等保存制度の利用が一気に進むことになると考えられ、今回の改正に至ったものです。