国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

WTO 糖尿病・肥満対策に砂糖入り飲料に課税要請

世界保健機関(WHO)が10月11日、肥満や糖尿病を減らすため、砂糖の入った飲料への課税を進めるよう各国政府に呼び掛けた。WHOは、以前から砂糖入り飲料などは「肥満や糖尿病に苦しむ人々を世界で増やす主要因」と指摘しており、価格が上がれば消費が減るとして、各国政府に砂糖入り飲料水に課税するよう呼びかけたもの。日本政府がWTOの呼びかけにどう反応するのか気になるところだ。

平成29年度税制改正議論が本格化してくるなか、WTOが砂糖入り飲料水の課税導入について各国政府に呼びかけた。日本政府がどう対応していくのか気になるところだが、実は2014年6月、「砂糖への課税」については、厚生労働省の有識者会議である「保健医療2035」策定懇談会(座長=渋谷健司東大大学院医学系研究科教授)が提言書まとめ、塩崎恭久厚労相に提出している。

提言書には「2035年に日本を健康先進国にする」ための中長期的な健康対策、医療制度改革案が盛り込まれ、たばこやアルコール、砂糖などの健康リスクに対する課税をはじめ、環境税を社会保障財源とすることも含め考えるように訴えている。

WTOが推奨する1日あたりの糖分摂取量は、摂取カロリーの5%未満。砂糖に換算すると25グラム(小さじ6杯分)に相当し、約40グラムの砂糖が含まれる炭酸ジュース1本飲むと摂取量オーバーとなる。誰しも砂糖の過剰摂取が身近な生活をする中、課税によって砂糖の摂りすぎを抑制し、糖尿病などの病気を防ぐとともに、拡大する医療費を抑えて安定した健康医療財源の確保につなげたいわけだ。

世界では、ハンガリーが砂糖や塩分の多い飲食品に課税する通称「ポテトチップス税」が施行されているほか、フランスが砂糖の添加された炭酸飲料に課税する「ソーダ税」がある。ルーマニアも「ジャンクフード税」なるものがあるほか、イギリスも、飲料に含まれる過剰な糖分に対する課税を2018年に導入する予定。今夏に詳細を協議し、17年に国会で審議する。イギリスの課税制度の中身は、飲料メーカーと輸入業者に対し、100ミリリットルあたり5グラム以上の糖分を含む飲料に課税する。税率は未定のようだが、8グラム以上は課税を高くするなど、糖分の含有量に応じた課税体系を決める。

「調整金」制度で国内農家を保護

さて、日本政府の今後の対応だが、厚労省はハッキリ言って積極的ではない。「保健医療2035」策定懇談会の提言書を見ても、税制改正要望にも明記していないのだ。

これには理由がある。日本政府としては、農業保護というお家事情があるのだ。

国内で消費する砂糖は、沖縄県・鹿児島県で栽培するサトウキビ、北海道のテンサイ(砂糖大根、ビート)などで約4割を生産し、残る約6割が海外から輸入した原料を基に砂糖メーカーが生産している。砂糖は、内外価格差が大きく、国内で生産する砂糖は海外産の約2~5倍も高い。そのため、日本政府は「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、海外から輸入する原料糖に「調整金」なるものを課しているのだ。

政府はこの調整金を財源に国内のサトウキビ、テンサイ農家や製糖工場を支援するため交付金を支給し、実質的高関税で国内農家を守っている。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉でも、砂糖(甘味資源作物)をコメ、麦、牛・豚肉、乳製品と並ぶ「重要5項目」の一つと位置付け、関税撤廃の例外とするよう強く求めているほどだ。

とはいうものの、日本でも明治34年、砂糖消費税として特別に課税されていた時代がある。当時、砂糖はぜいたく品とみなされたためだ。平成元年の消費税導入に伴って廃止された。

ちなみに明治38年には、塩専売法が公布(翌年施行)され、塩に対する課税も行われており、酢も酒造税則によって明治16年から課税されていた(同18年に廃止)。

現在、農家を保護するための調整金は、最終的に転嫁され一般消費者が負担している。そのため、砂糖に別途税金を課して、さらなる税負担を消費者に負わせることに厚労省も悩みどころだ。砂糖は、消費者生活に密着しているだけに、WTOの呼びかけにどう応えていくのか、今後の政府の動きにも注目していきたい。

著者: KaikeiZine編集部

KaikeiZine

租税調査研究会が監修する税金・会計の総合ニュースメディアです。税金・会計に関するさまざまなニュースを、わかりやすくお届けします!
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ