確定申告の時期になると、医療費控除への関心が高まります。特に今回は「スポーツジム」「コロナ」「インフルエンザワクチン」で気になる人が多いようです。「無理にでも条件に当てはめれば控除できる、控除したい」という雰囲気も感じられます。今回は、医療費控除の考え方を確認した上で、Q&A形式で解説します。

この記事の目次

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医療費控除の考え方を確認

最初に医療費控除の考え方を見ていきましょう。

医療費控除の対象は「治療・療養に必要な支出のみ」

医療費控除は、所得税法で次のように定められています。

(医療費控除)
第七十三条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
3 第一項の規定による控除は、医療費控除という。

【引用元】所得税法(e-gov)

医療費控除になるものは、所得税法施行令で次のように示されています。

(医療費の範囲)

第二百七条 法第七十三条第二項(医療費控除)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。

 医師又は歯科医師による診療又は治療
 治療又は療養に必要な医薬品の購入
 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第三条の二(名簿)に規定する施術者(同法第十二条の二第一項(医業類似行為を業とすることができる者)の規定に該当する者を含む。)又は柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条第一項(定義)に規定する柔道整復師による施術
 保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
 助産師による分べんの介助
 介護福祉士による社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第二条第二項(定義)に規定する喀痰かくたん吸引等又は同法附則第十条第一項(認定特定行為業務従事者に係る特例)に規定する認定特定行為業務従事者による同項に規定する特定行為

【引用元】所得税法施行令(e-gov)

国税庁のWEBサイトでは、通達も含めた形で次のように例示されています。

医療費控除の対象となる医療費

1 医師または歯科医師による診療または治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)

2 治療または療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)

(注)平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に支払う特定一般用医薬品等の購入費は、その年中に健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときに、通常の医療費控除との選択により、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の対象となります。

3 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価

4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)

5 保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦に病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)

6 助産師による分べんの介助の対価

7 介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価

8 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額

【引用元】No.1122 医療費控除の対象となる医療費(国税庁)

この他にもまだまだたくさんあるのですが、キーワードとなるのが次の3つです。

  • 診療、治療または治療の対価であること
  • 通常必要と認められるものであること
  • 一般的な支出の水準を著しく超えないこと

「ケガや病気など、健康とは言えない状態になったときに診療や治療、療養といった形で回復する過程で支払う金額で必要な部分だけ」

が原則、医療費控除の対象になると言えます。

なぜ医療費が所得控除になるのか

なぜ医療費は課税所得から差し引けるのでしょうか。

多額の医療費を支払わざるを得ない状態になると、通常の納税が難しくなるからです。

私たちが経済活動をして税金を納められるのは、健康な身体があってこそです。

大きなケガを負ったり重い病気にかかったりすると、多額の医療費を支払わなくてはなりません。

結果、生活で四苦八苦しますし、税金を払うのも大変になります。

課税の公平という観点からも、元気な人と同じだけの納税をさせることは望ましくありません。

この考え方のもとで設けられたのが「医療費控除」です。

一定額以上の医療費の支払いが生じたら、医療費の一部を所得から差し引いて納税負担をやわらげることができます。

逆に、健康増進や予防、美容目的の支出は医療費控除の対象になりません。

健康な体をより良い状態にするだけの資力のある人に、担税力の減殺は必要ないからです。