医療費控除Q&A
ここから、最近のホットキーワードを中心に医療費控除になるかどうかを考えましょう。
Q1:スポーツジム代は医療費控除になる?
A:たいていは対象外。条件つきで医療費控除になる。
高齢にともなう体力維持や病気予防もあってか、スポーツジムに通う人が増えました。
「毎月のジム代、高いな…医療費控除できたらいいのに」と思う人がいてもおかしくありません。
残念ながら、たいていは医療費控除にできません。
スポーツジムに通うのは通常、健康増進や美容目的です。
一方、医療費控除の対象は、診療・治療・療養のための支出に限られます。
そのため、ジム代は医療費として所得から差し引けないのです。
しかし、高血圧症や糖尿病などと医師から診断され、治療のための運動療法としてジム通いを指示された場合は、施設利用料が医療費控除の対象となります。
それでも次の条件に当てはまっていないといけません。
- 厚生労働省が指定した運動療法施設(指定運動療法施設)であること
- 医者の指示に基づいて1.の施設で運動療法を行うこと
- 2.の運動がおおむね週1回以上、8週間以上にわたって続けること
- 確定申告に運動療法実施証明書を添付し、指定運動療法施設の利用料の領収書を手元で5年間保管すること
Q2.通院のタクシー代は医療費控除できるの?
A.通常はならない。やむを得ない状況のときだけOK。
通院のための交通費も医療費控除の対象になります。
ただし、基本的には公共交通機関を使ったときの料金だけが対象です。
通院費が医療費控除になるためには、次の条件に当てはまることが求められます。
- 対価のうち通常必要なものである
- その病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない
- 人的役務の提供の対価である
電車やバスで通院できる状態なら、タクシーを使う必要はないわけです。
このときのタクシー代は医療費控除の対象になりません。
ただし、状況によってはタクシーがないと病院に行けないこともあります。
臨月や急病、足を痛めて歩くのが難しいケースです。
このときのタクシー代は医療を受けるのに必要なものとなるため、医療費控除の対象となります。
余談ですが、自分で車を運転して通院するときのガソリン代は医療費控除の対象になりません。
ガソリン代はガソリンの購入費用であって、人的役務の提供の対価ではないからです。
Q3. インフルエンザワクチンは医療費控除できるの?
A.ならない。
インフルエンザなどの予防接種の費用は、医療費控除の対象になりません。
予防接種はあくまで「予防」であって、診療・治療・療養のどれにも当てはまらないからです。
ただし、患者家族が受けるB型肝炎ワクチンは別です。
B型肝炎は、血液感染や性的接触、母子感染のリスクの高い病気です。
介護をする家族が事前にワクチンを受けることは、患者本人の治療の一環として必要なことでもあります。
そのため、B型肝炎ワクチンの接種費用は医療費控除の対象になります。
【考え方の参考文献・判決】
「租税法 第24版」(金子宏、弘文堂)
「所得控除の今日的意義-人的控除のあり方を中心として-」(田中康男、税大論叢第48号)
「漢方薬等の購入費用が医療費控除の対象となる医療費に該当しないとした事例(平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)国税不服審判所令和元年5月22日裁決(裁決事例集115号)」(税大ジャーナル2021年8月)
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