おさえておきたい!インボイス制度における領収書の基本ルール
インボイス制度において適格簡易請求書として利用する領収書やレシートは、以下の事項について記載がなければなりません。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
- 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
具体的なレシートの形式としては、以下のようになります。
(引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf)
すでに説明したように、この適格簡易請求書を交付できるのは、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等に係る取引だけです。
領収書の3つの基本ルール
適格簡易請求書として領収書を交付する場合の基本的なルールは以下のとおりです。
適格請求書発行事業者として登録を行って登録番号を領収書に記載する
インボイス制度の開始に伴なって、事業者の方が、適格簡易請求書を含む、適格請求書(インボイス)を交付するためには、納税地を所轄する税務署長に対して登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者とならなければなりません。
登録申請書を提出し、税務署における審査を経て、適格請求書発行事業者として登録された場合、「登録通知書」(登録番号や公表情報等が記載されています)が送付されてくるので、その登録通知書に記載されている登録番号を領収書に記載します。
なお、インボイス制度への登録申請手続等は、e-Taxソフトのほか、PCを利用して申請する「e-Taxソフト(WEB版)」およびスマートフォンやタブレットを利用して申請する「e-Taxソフト(SP版)」で行うことが可能です。
適格簡易請求書となるよう記載事項の要件を守る
適格簡易請求書の記載事項は、適格請求書の記載事項よりも簡易なものとなっています。
適格請求書の記載事項と比べた場合、書類の交付を受ける「事業者の氏名又は名称」の記載が不要である点、「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載で足りる点が異なっています。
適格簡易請求書の具体的な記載事項は、次のとおりです。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 課税資産の譲渡等を行った年月日
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
- 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
- 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率(※)
※「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」を両方記載することも可能です。
具体的な記載例は次のとおりです。
(引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf)
適格簡易請求書が交付できるのは特定の事業のみ
適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う次の事業を行う場
合、適格請求書の代わりに、適格請求書の記載事項を簡易なものとした「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を交付できます。
以下の事業については、適格簡易請求書の発行が可能です。
- 小売業
- 飲食店業
- 写真業
- 旅行業
- タクシー業
- 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
- その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
このうち、1から5までの事業については、「不特定かつ多数の者に対するもの」との限定はありません。
したがって、小売業として行う課税資産の譲渡等は、その形態を問わず、すべて適格簡易請求書を交付することが認められています。
「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」であるかどうかは、個々の事業の性質で判断します。
たとえば、以下のような事業が、「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」に該当することとなります。
- 資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業
- 事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業
発行側が注意するべき2つのポイント
適格簡易請求書を発行する事業者はどんなポイントに注意するべきでしょうか?
以下では、発行側が注意するべき2つのポイントについて解説していきます。
適格簡易請求書の交付
適格請求書発行事業者は、取引の相手方(課税事業者)の求めに応じて、適格簡易請求書を交付する義務があります。
適格簡易請求書の交付に代えて適格簡易請求書に係る電磁的記録を提供することも可能です。
写しの保存
適格簡易請求書を含む適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し、もしくは提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります。
この適格簡易請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地もしくはその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存する義務があります。
受領側が注意しておきたいポイント
一方、適格簡易請求書を受領する事業者はどんなポイントに注意するべきでしょうか?
以下では、受領側が注意するべきポイントについて解説していきます。
仕入税額控除の適用要件に注意
インボイス制度のもとでは、原則として、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等に
つき、課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間の保存が仕入税額控除の要件となります。
保存が必要となる請求書等の範囲は、次のとおりです。
- 適格請求書又は適格簡易請求書
- 適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類
- 次の取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類・ 卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食品等の販売・ 農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等が生産者から委託を受けて行う農林水産物の販売
- 1から3の書類に係る電磁的記録
まとめ
インボイス制度が始まれば、領収書の発行についてもいくつか注意しなければならなないポイントがあります。
まず、いくつかの記載要件を満たしたものでないと適格簡易領収書として認められないということです。
しかも、適格簡易請求書を交付するためには、税務署に申請を行って登録番号の交付を受けなければなりません。
適格簡易請求書を発行できる適格請求書発行事業者とならない場合、正確な消費税率や消費税額等がわからないため、仕入税額控除を受けられなくなるので注意してください。
また、適格簡易請求書を発行できるのは、特定の事業を営む事業者となっている点についても注意が必要です。
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