「所得がある=税金がかかる」と、私たちは思いがちです。しかし、中には税金のかからない「非課税所得」もあります。非課税所得は、納税額や申告だけでなく、いろいろな制度を適用できるかどうかにも影響します。

この記事の目次

■非課税所得とは?所得税・住民税での扱いを確認

最初に、非課税所得とはどういうものかを見ていきましょう。

非課税所得とは何か

非課税所得とは、所得税がかからない所得のことです。

社会政策的な配慮や貯蓄推奨の目的、必要経費的な性格といった理由で非課税とされています。

国税庁のWEBサイトには、次のような一覧が出ています。

【所得税および措置法による主な非課税所得】

区 分 非課税所得の項目および内容
利子・配当所得関係 障害者等の少額預金の利子(所法10)
勤労者財産形成住宅貯蓄の利子等(措法4の2)
勤労者財産形成年金貯蓄の利子等(措法4の3)
・ 納税準備預金の利子(措法5)
・ オープン型証券投資信託の特別分配金(所法9①十一、所令27)
・ 非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当等(いわゆる「NISA、ジュニアNISA」)(措法9の8、9の9)
給与所得・公的年金関係 ・ 傷病者や遺族などの受け取る恩給、年金等(所法9①三、所令20)
・ 給与所得者に支給される一定の旅費、限度額内の通勤手当、職務の遂行上必要な現物給与(所法9①四~六、所令20~21)
・ 国外で勤務する者の受ける一定の在外手当(所法9①七、所令22)
・ 外国政府、国際機関等に勤務する外国政府職員等が受ける給与所得(所法9①八、所令23、24)
・ 文化功労者年金法の規定による年金等(所法9①十三)
・ 特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益(いわゆる「税制適格ストック・オプション」(措法29の2)
譲渡(山林)所得関係 ・ 生活に通常必要な動産の譲渡による所得(所法9①九、所令25)
・ 資力喪失の場合の強制換価手続による譲渡による所得等(所法9①十、所令26)
・ 非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等(いわゆる「NISA、ジュニアNISA」) (措法37の14、37の14の2)
・ 国や地方公共団体等に財産を寄附した場合の譲渡所得等(措法40)
その他 ・ 内廷費および皇族費(所法9①十二)
・ オリンピック、パラリンピックにおいて優秀な成績を収めた者に財団法人日本オリンピック委員会等から交付される金品(所法9①十四)
・ 学資金および扶養義務を履行するために給付される金品(所法9①十五、所令29)
・ 国または地方公共団体が行う保育・子育て助成事業により、保育・子育てに係る施設・サービスの利用に要する費用に充てるために給付される金品(所法9①十六)
・ 相続、遺贈または個人からの贈与により取得するもの(所法9①十七)
・ 心身に加えられた損害または突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料など(所法9①十八、所令30)
・ 公職選挙法の適用を受ける選挙に係る公職の候補者が選挙運動に関し取得する金銭等(所法9①十九)
・ 都道府県、市区町村から、消費税率の引上げに際して低所得者に配慮する観点から支払われる一定の給付金(措法41の8、措規19の2)

【引用元】No.2011 課税される所得と非課税所得(国税庁)

主に所得税法や租税特別措置法で規定されていますが、税法以外でも非課税とされている所得もあります。

健康保険法や国民健康保険法で支給される保険金、雇用保険法で支給される失業手当、生活保護法で支給される保護手当などです。

所得は原則「すべて課税」だが

個人に帰属する所得は、すべて課税対象になるのが所得税法の原則です。

「何らかの理由で所得を得ているのなら、その分だけ担税力がある」という考え方に基づきます。

しかし、中には社会政策的な配慮などから課税するのにふさわしくないものもあります。

こういったものは所得税法や租税特別措置法などで非課税とされているのです。

なお、新型コロナウイルス感染症がまん延し始めた2020年、国民1人あたりにつき10万円の特別給付金が支給されました。

これも非課税とされている所得の1つです。

▼過去の記事はこちら

新型コロナの助成金・給付金に課税なんて……課税・非課税の基本的な所得税法の考え方

所得税の非課税所得は住民税でも非課税所得

所得税法で非課税とされている所得は、個人住民税の所得割も非課税となります。

「個人住民税の課税標準である所得は、特別に定めがない限り、所得税の所得の計算の例によること」とされているからです。

第二款 個人の道府県民税
第一目 課税標準及び税率
(所得割の課税標準)
第三十二条 所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
2 前項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額は、この法律又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、それぞれ所得税法その他の所得税に関する法令の規定による所得税法第二十二条第二項又は第三項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算の例によつて算定するものとする。ただし、同法第六十条の二から第六十条の四までの規定の例によらないものとする。

【引用元】地方税法(e-gov)

「例による」とは、他の税法で定めている事項をそのまま地方税法でも借用してあてはめることを指します。

なお、個人住民税は、所得税法で規定する非課税所得とは別に、均等割や所得割が非課税になる規定が設けられています。

【参考】いくらかかる?非課税世帯の条件は?個人住民税の基本を解説1