我が国の投資家が外国の事業体(例えば米国LLC)を通じて投資をする場合、日本での課税を考える上では、その外国事業体が日本の税法上、どのように取り扱われるかが重要となります。
経済活動のグローバル化に伴い、我が国の投資家が外国の法律に基づいて設立された事業体(外国事業体)活用するケースが増えています。
この場合、日本での課税関係を検討する上で重要な点は、当該外国事業体が日本の租税法上、法人として扱われ法人課税が適用されるのか、あるいは構成員課税(パス・スルー課税)が行われるのかという点です。
もし、パス・スルー課税が行われるとすると、事業体自身は納税主体とはならず、事業体に出資を行なっている構成員に事業から生ずる損益が直接帰属することとなります。
このように、法人に該当するか否かによって、課税関係は大きく異なります。
外国事業体は、設立された国の法制度等により様々な性格の事業体が存在します。
我が国の税法上は、外国事業体の取り扱いに関する明文規定はありませんが、米国LLCについては、国税庁から日本での租税法上の取り扱いが公表されています。
米国LLCに係る税務上の取り扱い
米国のLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー、Limited Liability Company)は、米国各州が制定するLLC法(Limited Liability Company Act)に基づいて設立される事業体です。
LLC法は、1977年に米国ワイオミング州で制定されたのを皮切りに、現在では全米の各州(50州)及びコロンビア特別区において制定されています。
LLCは、その構成員が自己の出資額を限度とした有限責任となっている点で株式会社に類似した性質を有しています。
米国の税務上は、LLCが稼得した所得について法人課税を受けるか、又は当該LLCの段階では課税されずその構成員の段階で課税されるという取扱い(こうした課税を「パス・スルー課税」といいます)を受けるかの選択が認められています。
この選択を行なうことを米国ではチェック・ザ・ボックス規則と呼んでいます。
米国の税務上、法人課税を選択したLLC、又はパス・スルー課税を選択したLLCは、我が国の税務上、外国法人に該当するものとして課税関係を考えることになるのでしょうか。
この問題について、平成13年に国税庁から「米国LLCに係る税務上の取扱い」が公表されました。
それによると、LLC法に準拠して設立された米国LLCについては、以下の点を根拠として、原則的には我が国の私法上、外国法人に該当するものとされました。
- LLCは、商行為をなす目的で米国の各州のLLC法に準拠して設立された事業体であること。
- 事業体の設立に伴いその商号等の登録(登記)等が行われること。
- 事業体自らが訴訟の当事者等になれるといった法的主体となることが認められていること。
- 統一LLC法においては、「LLCは構成員(member)と別個の法的主体(a legal entity)である。」、「LLCは事業活動を行うための必要かつ十分な、個人と同等の権利能力を有する。」と規定されていること。
以上から、LLCが米国の税務上、法人課税又はパス・スルー課税のいずれの選択を行ったかにかかわらず、原則的には我が国の税務上、「外国法人(内国法人以外の法人)」として取り扱われることとなります。
ただし、米国のLLC法は個別の州において独自に制定され、その規定振りは個々に異なることから、個々のLLCが外国法人に該当するか否かの判断は、個々のLLC法の規定等に照らして、個別に判断する必要があるとされています。