監査法人業界トップクラスの非監査売上と高利益率を誇るPwCあらた有限責任監査法人の2022年度決算を分析します。
この記事の目次
2022年版4大監査法人の決算分析シリーズ。
最終回は世界最大級の国際会計事務所であるPwCのネットワークに加盟し、非監査の分野に強みを持つPwCあらた有限責任監査法人(以下PwCあらた)について、2022年度を中心に直近5期の決算を分析していきます。
1.業務収入
まずは業務収入の推移から見ていきます。
(1) 業務収入推移
* 「業務及び財産の状況に関する説明書類」(*1)をもとに作成
2022年6月期(以下2022年度)の売上は565億円となり、前期比16億円の増収(+2.9%)となり、有限責任化した2017年度以降で最高の売上となっています。
ここ5期では増収が続いており、2018年度との比較では108億円(+23.8%)の増収、また2018年度からの年平均成長率(以下、CAGR)は+5.5%です。
グラフを見ると2019年度は31億円の増収(+6.8%)、2020年度は56億円の増収(+11.5%)と大きく成長していましたが、2021年度は5億円の増収(+0.9%)、2022年度は16億円の増収(+2.9%)にとどまっており、数年前と比べると成長の速度は落ち着いてきています。
監査業務と非監査業務に分けて売上推移を見てみます。
(2) 監査業務
監査業務の売上推移です。
ⅰ 業務収入推移
2022年度の売上は282億円となり、前期比+2億円(+0.7%)と僅かながら増収を確保しています。
ここ5期で見ると右肩上がりとなっているものの、当期は微増にとどまり、また2018年度からのCAGRは+4.7%と、売上全体の伸び(+5.5%)を下回っています。
監査業務について、クライアント数と1社あたり売上に分けて見てみます。
ⅱ クライアント数推移
2022年度の監査クライアント数は1,157社となり、前期比1社減少(△0.1%)とほぼ前年度並みです。
大手から準大手等へのクライアント流出が進んでいる中(*2)、PwCあらたにおいても2019年度の1,203社をピークに減少が続いていましたが、2022年度は1社減にとどまっています。
今後の推移を見る必要はありますが、監査クライアントの絞り込みには一定のめどが立ったのかもしれません。
ⅲ 1社あたり業務収入推移
* 1社あたり監査業務収入=監査業務収入÷(期首期末の平均監査クライアント数)
2022年度の1社あたり売上は2,437万円となり、前期比43万円上昇(+1.8%)となっています。
ここ5期では上昇が続いており、2018年度比では346万円上昇(+16.6%)、またCAGRは+3.9%です。
以上より、監査業務の売上についてはクライアント数の微減を継続的な単価アップでカバーして増収となっています。
ここ5年のトレンドで見てもクライアント数は減少、単価は上昇という傾向にあり、他の大手法人と同様のトレンドです。
(3) 非監査業務
続いて非監査業務の収入推移です。
ⅰ 業務収入推移
2022年度の売上は283億円となり、前期比14億円(+5.3%)の増収となっています。
前期は「業務及び財産の状況に関する説明書類」を開示した2017年度以降、初めて減収となっていましたが、当期は2020年度の282億円もわずかながら上回り、非監査売上として過去最高を記録しています。
非監査業務についてもクライアント数と1社あたりの売上に分けてみてみます。
ⅱ クライアント数推移
2021年度の非監査クライアント数は1,233社となり、前期比28社増加(+2.3%)となっています。
非監査クライアントに関しては、ここ5年間で増減まちまちであり、2019年度と2022年度が増加、2020年度と2021年度が減少です。
なお4期前の2018年度と比べると8社減少(△0.6%)と、わずかに減少しています。
ⅲ 1社あたり業務収入推移
* 1社あたり非監査業務収入=非監査業務収入÷(期首期末の平均非監査クライアント数)
2022年度の1社あたり売上は2,318万円となり、前期比142万円上昇(+6.5%)となっています。
売上単価は前期の低下から反転しており、2018年度と比べると440万円上昇(+23.4%)、CAGRは+5.4%となっています。
以上より、非監査業務についてはクライアント数、単価ともに前期比増加・上昇したことで増収決算となっています。
なお監査、非監査ともに増収でしたが、非監査の伸びが監査を上回り、非監査売上が283億円と、監査売上282億円をわずかに上回ったことで、非監査の割合は再度50%を超えています。