2.業務費用

次に費用に目を向けてみます。

(1) 業務費用推移

2022年度の業務費用は547億円となり、前期比23億円増加(+4.4%)となっています。

増収に伴い費用も増加傾向にあり、2018年度と比べると91億円増加(+20.1%)、CAGRは+4.7%です。

売上に対する費用の比率(業務費用比率)を見ると、2018年度の99.8%こそ下回っているものの比率は徐々に上昇しており、2022年度は96.8%と前期比1.4%アップです。

* 業務費用比率=業務費用÷業務収入

 

PwCあらたは、業務費用を「人件費」「賃借関連費用」「採用及び研修費用」「IT機器費用等及び通信費」「その他業務費用」の5つに分類しており、そのうち「人件費」は業務費用の7割を占める最大のコストとなっています。

次に「人件費」の推移を見てみます。

(2) 人件費推移

2022年度の人件費は376億円となり、前期比9億円増加(+2.6%)となっています。

人件費は売上や業務費用と同様に右肩上がりですが、CAGRで見ると売上+5.5%、業務費用+4.7%に対して人件費は+4.6%におさまっています。

続いて人員数と1人当たりの人件費に分けて見てみます。

(3) 人員数推移

2022年度の人員数は2,832人となり、前期比176人減少(△5.9%)となっています。

ここ5年では2019年度の3,251人をピークに3期連続で減少しています。

内訳を見てみます。

(人員数内訳)

2018年
6月末
2019年
6月末
2020年
6月末
2021年
6月末
2022年
6月末
社員
公認会計士 116 121 132 137 148
特定社員 29 28 25 31 37
構成員
公認会計士 900 897 888 892 865
公認会計士試験合格者等 532 576 630 578 617
監査補助職員 882 1,000 1,153 1,237 1,067
その他の
事務職員等
596 629 232 133 98
合計 3,055 3,251 3,060 3,008 2,832

前期比では監査補助職員が170人減少、その他の事務職員が35人減少、使用人としての公認会計士が27人減少し、社員は17人増加(うち公認会計士11人増加、特定社員6人増加)、公認会計士試験合格者等が39人増加となっています。

ここ5年間ではその他の事務職員の減少幅が大きく、2018年度比では498人減少(△83.6%)となっています。

外注費が前期比6億円増加( (5) その他業務費用 参照)していることとあわせて考えると、間接業務のアウトソースを進めることで事務職員を減少させている可能性があります。

(4) 1人当たり報酬給与推移

* 1人当たり報酬給与=報酬給与÷(期首期末の平均人員数)

 

2022年度の1人当たり報酬給与は1,026万円となり、前期比58万円上昇(+6.0%)となっています。

2018~2021年度は700~900万円台で推移していましたが、2022年度は1千万円を超える水準となっており、その要因として比較的単価の低いその他の事務職員及び監査補助職員の減少といった人員構成の変化が考えられます。

以上より、人員数は減少しているものの単価の上昇を受けて人件費は増加傾向にあります。

(5) その他業務費用

項目別の業務費用推移を見てみます。

(単位:百万円)

2018年
6月期
2019年
6月期
2020年
6月期
2021年
6月期
2022年
6月期
人件費 31,442 31,813 35,100 36,649 37,592
賃借関連費用 2,455 2,326 2,307 2,370 2,176
採用及び研修費用 899 947 868 624 825
IT機器費用等
及び通信費
1,138 1,717 2,056 2,267 2,409
その他業務費用 9,599 9,065 11,171 10,444 11,666
合計 45,534 45,870 51,504 52,356 54,670

人件費以外では、その他業務費用12億円増加(+11.7%)が目立ちます。

附属明細書を見ると外注費6億円増加(+9.8%)、サービスチャージ等2億円増加(+13.8%)、その他3億円増加(+20.0%)となっており、外注費の増加はその他の事務職員等の減少と関連がありそうです。

以上、業務費用についてまとめると、単価の上昇による人件費の増加9億円や外注費6億円増加等により合計で23億円増加(+4.4%)となっています。

そして費用増加が売上増加(+2.9%)を上回ったことで業務費用比率は95.4%から96.8%へと上昇し、増収減益決算となっています。(「4.利益 (1) 営業利益、営業利益率推移」参照)

3.営業外収益費用、特別損益

営業外収益費用、特別損益項目について年度ごとの推移を見てみます。

(単位:百万円)

2018年
6月期
2019年
6月期
2020年
6月期
2021年
6月期
2022年
6月期
営業外収益
受取利息及び配当金 19 536 536 19 4
為替差益 25
その他営業外収益 152 175 121 145 196
合計 196 712 658 164 201
営業外費用
支払利息 75 70 52 117 182
支払手数料 14
その他営業外費用 35 79 31 25
合計 89 105 131 148 207
経常利益 195 3,472 3,365 2,515 1,781
特別利益
関係会社出資金譲渡益 3
投資損失引当金戻入益 79 27 27 61 49
合計 82 27 27 61 49
特別損失
固定資産除却損 7 38 5 71 103
投資損失引当金繰入額 61 18 4
合計 68 38 24 76 103
税引前当期純利益 209 3,462 3,369 2,500 1,726

(1) 営業外収益・費用

支払利息が前期比6千5百万円増加(+55.6%)しており、主に2021年度におけるリース債務の増加(2020年度末15億円、2021年度末47億円)に対応する費用増と思われます。

(2) 特別利益・損失

固定資産除却損が1億円計上されており、附属明細書では大手町オフィスの工事を行っていることが記載されていることから、これに関係する除却損失の可能性があります。

4.利益

続いて利益について見ていきます。

(1) 営業利益、営業利益率推移

2022年度の営業利益は18億円で前期比7億円減少(△28.5%)、営業利益率は3.2%で前期比1.4%低下となっています。

増収決算に関わらず営業減益となっているのは、人件費を中心とした業務費用の増加が増収効果を上回ったためであり、これは2020、2021年度と続いています。

3.2%という利益率は他法人に比べるとかなり高いものの、コストの上昇に伴い営業利益減少及び利益率の低下が続いているのは気になるところです。

(2) 当期純利益、当期純利益率推移

2022年度の当期純利益は12億円で前期比6億円減少(△34.8%)、当期純利益率は2.1%で前期比1.2%低下となっています。

営業外収益費用、特別損益で影響の大きな項目はなく、主に営業減益が響いたことで当期純利益ベースでも減益決算となっています。

5.その他

ここまで損益計算書を中心に見てきましたが、それ以外の項目についても見ていきます。

(1) 配当

PwCあらたは無配です。

(2) 長期貸付金

(単位:百万円)

2018年度末 2019年度末 2020年度末 2021年度末 2022年度末
長期貸付金 633 779 654 408 23

2018年度以降、数億円単位で長期貸付金が計上されていましたが、2022年度末は2千3百万円と大きく減少しています。

最後に

4大監査法人のうち、非監査売上や利益の面で他法人と一線を画すPwCあらた有限責任監査法人の決算を5期に渡り見てきました。

2021年度こそ非監査で減収となりましたが、2022年度は監査、非監査とも継続的な単価の上昇により増収を確保しています。

一方、人件費や外注費を中心としたコスト増の影響により減益決算となり、利益率も低下が続いています。

なお監査、非監査ともにクライアント減少が落ち着いてきたようにも見え、2023年度以降の推移が気になるところです。

 

【参考・出典】

*1 業務及び財産の状況に関する説明書類

*2 「令和4年版 モニタリングレポート」、公認会計士・監査審査会

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