2022年8~9月にかけて有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)、有限責任あずさ監査法人(以下あずさ)、有限責任EY新日本監査法人(以下新日本)及び有限責任PwCあらた監査法人(以下あらた)の決算が発表されています。今回は2022年度決算に基づく4大監査法人のランキングをご紹介します。

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2022年度 4大監査法人ランキング(後編)

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2022年版 4大監査法人決算分析 有限責任監査法人トーマツ

2022年版 4大監査法人決算分析 有限責任あずさ監査法人

1.業務収入ランキング

まずは決算数値から見ていきます。

(1)業務収入

4大監査法人の業務収入、いわゆる売上は以下の通りです。

(単位:百万円)

2021年度
2022年度
前期比
増減額 増減率(%)
トーマツ 123,676 138,814 15,138 12%
あずさ 105,281 111,098 5,817 6%
新日本 104,037 106,431 2,394 2%
あらた 54,856 56,458 1,602 3%

* トーマツのみ2022年5月決算、あずさ、新日本及びあらたは2022年6月決算

* 数字は各法人の業務及び財産の状況に関する説明書類より(*1)

 

業務収入ではトーマツが1,388億円を計上し、1位となっています。

それに続くのがあずさで1,111億円、3位が1,064億円の新日本、そして離れた4位が565億円のあらたとなっています。

収入全体の順位は2021年度から変わっておらず、2018年度以降はトーマツがトップをキープしています。

1位トーマツと2位あずさには278億円の差があり、あずさの収入はトーマツの8割程度です。

またトーマツと4位あらたの差は824億円であり、規模にすると2.5倍ほどになります。

4つの法人をまとめて「大規模監査法人」や「BIG4」などと呼びますが、収入規模にはかなり差があることが分かります。

なお収益認識に関する会計基準等適用の影響によりトーマツの2022年度業務収入は90億増加しています。

この影響を除くと増収額は61億円、増収率は4.9%となります。

その他の3法人では上記適用による影響はなしとなっています。

 

(2) 監査業務

業務収入のうち、監査法人のメインとなる監査業務から見ていきます。

ⅰ.監査業務収入

各法人の監査業務収入は以下のようになっています。

(単位:百万円)

2021年度
2022年度
前期比
増減額 増減率(%)
トーマツ 83,223 86,143 2,920 4%
あずさ 83,296 85,432 2,136 3%
新日本 88,706 89,666 960 1%
あらた 28,013 28,206 193 1%

トップは897億円を計上した新日本です。

収入全体では3位でしたが、2021年度に引き続き監査業務収入は1位となっています。

2位は861億円のトーマツ、そして僅差の3位は854億円のあずさとなっており、最後に282億円であらたが続きます。

ここ数年、監査業務収入のランキングは1位新日本、2位あずさ、3位トーマツ、4位あらたという順序が続いていました。

2022年はトップこそ新日本がキープしているものの、トーマツがあずさを抜いて2位となっています。

なお新日本、トーマツ、あずさの監査業務収入は850~900億円であり、さほど差はありませんが、4位のあらたはトップ新日本の30%程度であり、その差は615億円とかなり大きいものとなっています。

ⅱ.1社あたり監査業務収入

監査業務について、1社あたりの単価を見ていきます。

(単位:千円)

2021年度
2022年度
前期比
増減額 増減率(%)
トーマツ 25,497 26,604 1,107 4%
あずさ 22,906 23,998 1,092 5%
新日本 24,007 24,182 175 1%
あらた 23,943 24,368 425 2%

* 1社あたり監査業務収入 = 監査業務収入÷(前期末監査クライアント数と当期末監査クライアント数の平均)

 

1位はトーマツで2,660万円となり、2位あらた2,437万円、3位新日本2,418万円、そして4位があずさで2,400万円となっています。

トーマツが他法人より1割ほど高くなっていますが、それ以外の3法人は同水準です。

 

(3) 非監査業務

続いて非監査業務を見ていきます。

ⅰ.非監査業務収入

法人ごとの非監査業務収入は以下となっています。

(単位:百万円)

2021年度
2022年度
前期比
増減額 増減率(%)
トーマツ 40,452 52,670 12,218 30%
あずさ 21,985 25,665 3,680 17%
新日本 15,331 16,765 1,434 9%
あらた 26,842 28,252 1,410 5%

収入トップはトーマツで527億円となっています。

それに続くのがあらたで283億円、そして3位があずさで257億円、4位が新日本で168億円となっており、順位は2021年度と変わっていません。

非監査業務ではトーマツが他の3法人を大きく引き離しており、トーマツの収入を基準とした時の割合は下記となっています。

2021年度 2022年度
あずさ 54% 49%
新日本 38% 32%
あらた 66% 54%

2位あらたは半分強、3位あずさは半分弱、そして4位の新日本は1/3以下となっています。

なお、トーマツには離されているとはいえ、あらたも非監査には強みを持っています。

監査業務では大きく後れを取っているものの、非監査ではあずさ、新日本を上回り2位につけており、PwCのブランド力を垣間見ることができます。

ⅱ.1社あたり非監査業務収入

続いて非監査業務の売上単価を見ていきます。

(単位:千円)

2021年度
2022年度
前期比
増減額 増減率(%)
トーマツ 13,153 17,749 4,596 35%
あずさ 10,544 12,718 2,174 21%
新日本 6,969 8,351 1,382 20%
あらた 21,752 23,176 1,424 7%

売上単価でみると、1位はあらたの2,318万円、2位がトーマツで1,775万円、そして3位あずさ1,272万円、4位新日本835万円と続きます。

あらたの単価は2位トーマツより3割ほど高く、また4位新日本の3倍弱と、他法人に比べてかなり高くなっています。

また新日本の835万円は2位トーマツの半分程度、3位あずさの2/3程度であり、その低さが目立ちます。

ⅲ.非監査業務収入割合

全体の収入に占める非監査業務の割合は以下となっています。

2021年度 2022年度 増減
トーマツ 32.7% 37.9% 5.2 pt
あずさ 20.9% 23.1% 2.2 pt
新日本 14.7% 15.8% 1.0 pt
あらた 48.9% 50.0% 1.1 pt

非監査業務の割合が最も高いのはあらたで50%、それに続くのがトーマツで37.9%、そして3位あずさが23.1%、4位新日本が15.8%となっています。

あらたは監査と非監査がほぼ半々となっており、監査を主体とする日本の監査法人では異色です。

2位のトーマツはもともと非監査に強みを持っていますが、2022年度は非監査売上が大きく増加したことで1/3以上となり、非監査の割合がさらに高まっています。

4位の新日本は監査が8割以上を占めることから監査業務主体の法人と言えますが、これは2017年にアドバイザリー業務を移管した影響等によるものと思われます。

非監査については各法人の関係するコンサルティングファームとのすみわけの影響等があり、監査法人の決算だけでは把握しきれないのが実際のところです。

とはいえ大手監査法人への就職、転職を希望する公認会計士や学生の方には、非監査業務へのアクセスのしやすさについて判断する一定の物差しにはなるでしょう。