先日、新型コロナの5類見直しが5月8日に決まり、昨年までDX、AIなどデジタル一辺倒だったビジネス環境もここにきて再びリアルへ舵を切る動きが出始めています。
この記事の目次
営業利益を増やすべく、地代家賃を抑えたい。
会計本来の役割ですが、改めて見ると「ビジネス→会計」なる一方通行です。
会計を見据えながらビジネスを考えるという視点を加え、目線を2車線にする。
両者の横断を可能にすれば、間違いなくいずれの精度も向上します。
ビジネスから会計、会計からビジネス第3回は、「インストア」です。
リアルビジネスへの回帰
ビジネスを展開する「場所」には大きくリアルとデジタル(ネット)の2つがあります。
(いずれここに、第3の場所として「メタバース」が加わるかもしれません)
2020年から始まったコロナ禍の3年間で、巣ごもり消費やテレワーク、そしてDXの推進によってデジタル側に一方的に大きく傾きました。
しかし、ようやく昨年後半あたりから、デジタルからリアルへの動きが活溌になりつつあります。
例えば、アパレル業界です。
「niaulab」in 表参道/株式会社ZOZO
や、
時価総額12兆円を誇る中国発のオンラインファストファッション「SHEIN」による
「SHEIN POPUP OSAKA」
https://jp.shein.com/campaign/popuposaka-22
など、それぞれPOPUPという期間限定ではあるものの、リアル店舗への展開を進めています。
もちろん、旧来からあるシンプルな小売形態ではなく、より「体験型」に注力したモデルです。
店舗ビジネスに纏う特有のリスクを軽減しつつ、新しい切り口で顧客との接点を増やすことを目的としています。
3年間に及んだコロナ禍は、何の前触れもなく、ビジネス環境を突然変えてしまう事象が明確に存在することを強く示し、旧来からのスタイルのまま運用することが難しくなっていると言えます。
リスク低減させつつ、かつビジネス効率性を確保するという観点がより欠かせません。
その1つが「インストア」です。
以前からある手法ですが、コロナ禍において、米国などではウォルマートを筆頭にオムニチャンネル等との戦略と併せ、アップルやサムスンなどとの提携も進むなど多くの事例が誕生しています。
インストアのメリット、デメリット
インストアとは、文字通り店舗の中に別の店舗を構える(テナントとして提供するなど)形態のことを指しています。
ビジネス面、会計面でのメリットを確認してみましょう。
まず、ビジネス面。
そのメリットはなんといっても「集客の効率性」につきるでしょう。
インストアとして入るテナント次第では、場所や業態によってそのまま立地上の恩恵に預かることができます。
デメリットとしては、制限されたスペースゆえに、展開できる商品群の上限値が比較的低くなってしまうことによる機会損失の可能性が想定されます。
一方、会計面では、インストアスタイルを選択することで、少なくとも次の3つのメリットが享受できます。
- 家賃に対するパフォーマンス
- 人件費を含む販管費全般の抑制
- 資産圧縮
1つめは、よく言われる「坪単価」。
一定の広さでどれだけ売上、そして利益を出すことができるか、です。いわゆる飲食店における回転率も同様です。
2つめは、スペースの広さに比例して増加する販管費の抑制です。
リアルビジネスは、その場所が広ければ広いほど、変動固定費的に人件費、光熱費などが増加しますが、インストア形式にすることで、良い意味で制約をかけることができます。
そして、最後の3つめ。
路面店など自社所有との比較になりますが、家賃を前提として店子として入るため、土地や建物などの資産を抱える必要がありません。
結果、総資産全体に対する効率性を獲得することができます。
会計面におけるデメリットは、入居先のオーナーによっては、百貨店などに見られる「売上歩合方式」が取られているケースがあり、地代家賃増のリスクがあることでしょう。
ビジネス面、会計面の両方を確認しましたが、物理的な制約条件を持つリアルビジネスにおいて、数少ない効率性やリスクコントロールの性質を保有する選択肢の1つであることは明らかです。
続けて、実際にあるインストアの例を3つご紹介しましょう。