「専門家」の採用でマンパワーアップ
前述の「国際戦略トータルプラン」によると、国税庁は富裕層への包囲網として「調査マンパワーの充実」にも相当な力を入れているようだ。国税局や税務署に専担職員を配置するほか、富裕層対応の専担職員のスキルアップも重視。金融、投資、資産プランニング、国際課税問題などのビジネス実務を徹底的に叩き込み、高度な専門知識とともに常に最新の情報を維持する教育体制を整えている。
専門家の採用にも力を入れ始めた。富裕層相手にビジネス展開していた弁護士や税理士などの専門家を採用し、専門知識やノウハウを共有し、戦力にするのが狙いだ。「超富裕層PTの設置」も、こうした包囲網の一つである。
「富裕層」の定義とは———
では、国税庁が躍起になって情報を集めている「富裕層」の定義とは何だろうか。
実は、富裕層の定義について国税庁は、「有価証券・不動産などの大口所有者や経常的に高額所得を得ている者」という漠然とした表現にとどめ、ハッキリ公表していない。「超富裕層」にいたっては言わずもがな。
しかし、国際税務に精通した国税庁OBによると「公表していないだけで、内部では所得別、資産別の定義が存在する」という。同氏いわく、「PTは富裕層の個別管理を徹底するために設置したもの。しかし富裕層の状況は地域によって異なるため、国税局ごとに独自の線引きをしている側面もあるだろう」という。
因みに民間のシンクタンクである野村総合研究所では、貯金や株式などの資産から借金を引いた純金融資産が1億円以上を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」と定義している。またメリルリンチ等が発表している「アジア太平洋地域ウェルス・レポート」では、100万米ドル(約1億円)以上の純金融資産の保有者を「富裕層」、3000万米ドル以上(約30億円)を「超富裕層」としている。超富裕層の定義は両者で大きな差があるが、「国税庁がこれらのレポートを意識している事は間違いない」(国税OB税理士)。
超富裕層じゃないから関係ない?
「自分は超富裕層じゃないから関係ない」と捉える人が多いようだが、PTのターゲットは超富裕層の〝関係者〟も含まれている。財産債務明細書や国外財産調書、金融情報自動情報交換制度などの登場により国税当局による情報入手ルートは確実に広がっており、また、マイナンバーの浸透によりこうした個人情報は確実に関係機関で共有されている。税務調査の国境がなくなってきている今、「超富裕層」のハードルが下がってくる可能性も十分に頭に入れておきたい。




