最近では外国人留学生をアルバイトとして雇用する企業が増えています。外国人留学生にアルバイト代を支払う場合、所得税の源泉徴収をしなければならないのでしょうか。

この記事の目次

最近では外国人留学生をアルバイトとして雇用する企業が増えています。

外国人留学生にアルバイト代を支払う場合、所得税の源泉徴収をしなければならないのでしょうか。

「どこの国から来た留学生か?」「居住者か非居住者か?」などによって、源泉徴収の取扱いが異なります。

《ケース》

私は食堂を営んでいます。

この度、中国とインドからの留学生をアルバイトとして雇うこととなりました。

留学生に支払うアルバイト代から所得税の源泉徴収をしなければならないのでしょうか。

外国人留学生に支払うアルバイト代については、租税条約により所得税が免税となる場合があるので、租税条約の規定を確認する必要があります。

1. 中国からの留学生の場合

中国から来日した留学生の場合は、日中租税条約を確認しなければなりません。

日中租税協定第21条には、次のように規定されています。

『専ら教育若しくは訓練を受けるため又は特別の技術的経験を習得するため一方の締約国(日本)内に滞在する学生、事業修習生又は研修員であって、現に他方の締約国(中国)の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国(中国)の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得については、当該一方の締約国(日本)の租税を免除する。』

※( )は筆者が追加

したがって、中国人留学生の日本での生活費や学費に充てるためのアルバイト代は、「生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得」に当たることから、所得税は免税となります。

なお、租税条約の免税措置を受けるためには、入国の日以後最初にアルバイト代の支給を受ける日の前日までに、給与の支払者を経由して「租税条約に関する届出書」を、支払者の所轄税務署長に提出する必要があります。

2. インドからの留学生の場合

一方、インドから来日した留学生については、日印租税条約を確認しなければなりません。

日印租税条約第20条には、次のように規定されています。

『専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国(日本)内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国(インド)の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国(インド)の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得については、当該一方の締約国(日本)の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国(日本)外から支払われるものである場合に限る。』

 ※( )は筆者が追加

日印租税条約の場合は、最後に「ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。」と規定されているため、日本以外の国から支払われるものについては免税となりますが、日本で支払われる給与については免税とはなりません。

よって、アルバイト代の支払いの際には所得税の源泉徴収が必要です。

なお、ベトナム、シンガポール、マレーシア等の租税条約が、インドと同じような規定ぶりとなっています。

このように、国によって租税条約の規定振りが異なるため、注意が必要です。