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税理士数増加も東京・大阪・愛知で7割超占める

今年の税理士試験の合格発表は、例年より1周間遅れの12月16日だ。合格発表を境に、“税理士のタマゴ”等のリクルート活動も盛んになるが、税理士事務所業界は現在、大きな変革期の中にある。税理士事務所業界の現状についてまとめた。

「税理士事務所業界」とあえて定義するのは、代表者及び所長が「税理士登録」している事務所をメーンにした業界のリポートだからだ。監査法人などの会計事務所は含んでいない。
さて、税理士試験に合格した“税理士のタマゴ”の多くは、12月16日の合格発表を境に、転職・就職活動に動き出す。
税理士になるためには、一般的に試験に合格するだけでなく、実務経験を2年以上積み、更には日本税理士会連合会(日税連)に備える税理士名簿に登録する必要がある。試験に合格しただけなら、「税理士試験合格者」というタイトル持ちで、税理士業務はできないことになっている。

北陸、東北、北海道は税理士減少

税理士は2015年12月末で、全国に7万5643人。最も多いのが東京で2万1916人、最も少ないのが沖縄の382人となっている。興味深いのが、都道府県別の税理士登録者数を見たとき、“西高東低”というべき現象が起きている点だ。
以下の図表を見て欲しい。図表は平成26年から同27年の登録者数の推移だけでなく、平成22年から5年間の税理士登録者数の推移を表している。
税理士登録者数は、平成22年12月末で7万2039人だったことから、5年間で3604人増加しているが、増えているのは主に関東から西というのが一目瞭然だ。北陸、東北、北海道では税理士登録者数が減少している。
もう少し見ていくと、5年間で100人以上登録者が増えている都市は、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、兵庫、福岡の8都府県だ。中でも急増しているのが東京、大阪、愛知で、全体の75パーセント近くを占めている。

税理士登録だけを見ていくと、減少している地域は開業しても経営が厳しいイメージがあるが、税理士事務所業界は高齢化が進んでいることから、若手税理士が参入していくチャンスは十分にある。なぜなら、高齢でリタイアする税理士も少なくなく、リタイアした税理士の顧客が若手税理士に流れてくる可能性もあるからだ。顧客側も代替わりがあり、経営者が息子になっているケースも多々ある。こうしたケースでは、よいキッカケがあれば、先代から関与していた税理士から、自分と同年代の税理士に顧問を代えたいと思っている場合が多い。都市部で勝負しなくても、将来を見越して地方で十分に勝負できる土壌はあるのだ。

個人事務所の時代から法人時代へ

さて、平成13年の税理士法改正で、翌年から税理士法人が設立できるようなったが、制度施行から15年で税理士法人数は2016年11月末現在、3417件にまで増えた。税理士法人といっても、1千人を超える事務所から、数名で経営している事務所までその差はあるが、時代は「法人化」の路線だ。

法人化路線の最大の理由は、代表者の健康などに関係なく、事業を継続できる点。税理士法人は2名以上の税理士が居なくては設立することはできず、支店を設ける場合は、その支店にも常駐者として資格者を配置しておく必要がある。つまり、複数税理士での経営を義務付けており、事業継続性を重視させているのだ。
また、税理士業務が複雑化している中、一人の資格者ですべての税務問題を解決していくのが困難になっていることも、法人化選択の大きな理由になっている。税理士資格を持った複数の税理士が共同でサービスを提供していく、そうした時代になっているのだ。

医療業界と同じような現象

税理士事務所業界は、医療の世界と似ており、「総合病院」と町の「クリニック」のような住み分けが進んでいる。千人、数百人規模の税理士法人は、総合病院化しおり、そこに行けば高度医療をワンストップで受けられるように、高度な税務問題をワンストップで提供している。ただ、風邪などの症状であれば、掛かりつけのクリニックを利用するように、日頃の記帳や決算、税務相談なら近所の税理士事務所が必要だ。規模が小さな税理士事務所も顧客ニーズは高いのだ。
今厳しい状況にあるのが30~50人規模の事務所だ。20年前には大手事務所といわれていた規模だが、数百人規模の大手事務所が拡大戦略をとる中、規模の大きい顧客はそれら大手事務所、規模の小さな顧客は地元の小規模事務所に奪われ、経営的に厳しい状況に追い込まれているケースを見かける。こうした事務所は先を見越して、大手事務所の傘下に入っていくか、M&Aしてしまうか、規模拡大に邁進していくか、経営的に厳しい選択を迫られている。
今後は、大手事務所が中規模事務所をM&Aするか、もしくは傘下に加えて支店し、さらに強大化していくものと予想される。また、中・長期的には、大手税理士法人同士のM&Aというのも現実に行われる可能性は高く、税理士事務所の業界地図は大きく塗り変えられる可能性が高い。税理士事務所の場合、大手監査法人系列の税理士法人が必ずしも有利と言うわけではなく、独立系の税理士事務所が規模、売り上げでトップ3を占めることも十分考えられる。
税理士資格者という“人材”も、大手事務所を中心に引き抜き、取り合いになっていくのも時間の問題だ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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