国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

所得15億円稼いだら中小企業の税優遇はNG 政府が29年度税制改正に盛り込む

政府は平成29年度税制改正で、大企業並みに所得のある中小企業は、租税特別措置法(租特)に基づく中小企業向け優遇税制の対象から除外する方針だ。同27年度税制改正でも会計検査院の指摘を受け、政府税制調査会(政府税調)で議論された問題だが、財務的に脆弱でない中小企業に対してはきちっと納税してもらう。今回の見直しによって、所得が15億円を超える数百社が税の優遇措置を受けられなくなる。

財務状況が脆弱な中小企業を支えるために設けられている優遇税制が、いびつな形で活用されているとして法人課税の見直しが迫られていた租特に、いよいよメスが入る。「ついに実施されるのか」という印象のある今回の見直しだが、具体的には、所得が15億円を超える中小企業は、研究開発減税の上乗せ措置、年800万円以下の所得に対する軽減税率、中小企業限定の投資減税などの政策減税の適用が受けられなくなるというもの。
法人税では、資本金1億円以下の企業を中小企業者と定め、数十億円という利益を稼ぎ出す大きい会社でも、中小企業向けの減税措置が受けられるようになっている。

「恒久減税」と「政策減税」で区分

税の優遇措置は、「恒久的な制度としての減税」と「政策減税」の二種類に分類され、中小企業の恒久的な減税措置としては、赤字企業も対称になる「外形標準課税の適用対象外」
「繰越欠損金の控除限度額が所得の100%」等がある。
政策減税は、「研究開発減税の上乗せ措置」、「投資促進税制」をはじめ、本来的には恒久的な減税措置であるものの、現在は減税幅が政策減税により拡大している「所得800万円以下に対して15%の軽減税率」などがある。
平成29年度税制改正では、このうち政策減税についてのみ所得15億円超の中小企業者の適用を制限するもの。上記以外でも政策減税として、「年800万円までの交際費について損金算入できる特例」「30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例」などがあるが、これらも制限されるのか、利用頻度の高い制度だけに、詳細については12月8日に決定予定の税制改正大綱を確認したい。

2年前に会計検査院が疑問投げかけ

今回の大企業並みに所得のある中小企業に対しての税優遇の見直しは、会計検査院の指摘を受け、平成27年度税制改正時から政府税調でも議論されてきた。会計検査院は「多額の所得があり担税力が弱いとは必ずしも認められない中小企業が存在していて、優遇措置を受けることが適当かどうか」と疑問を投げかけていたが、このときは、資本金1億円という中小企業の基準について、数段階にするべきではないかなどという意見も出ていた。今回は、中小企業を定義する枠組みまでは見直されなかった模様だ。
ところで、なぜ大企業並みの所得のある法人が税法上の中小企業者となってしまうのか。大企業が中小企業となる方法は、会社法上、出資をする場合には、その出資額の半分以上を資本金とする必要がある。たとえば、2億円の出資をする場合、1億円以上を資本金とし、残りの金額を資本準備金とする。しかし、資本金を減らす場合は制限がない。100億円の資本金があっても、その資本金を1億円にして残りの99億円を資本準備金やその他資本剰余金などにすることが可能だ。赤字企業なら、減らした資本金でマイナスとなっている利益剰余金の穴埋めも可能だ。

大企業の「税優遇」目的の資本金減らしに鉄槌

2015年には、吉本興業が資本金を125億円から1億円に減資しているが、今回の見直しで、大企業が資本金を減らして中小企業になっても、ほぼ減税優遇を受けられなくなるといっても過言ではない。なお、租特は業界団体や関係省庁の要望を受け、与党の税制調査会が新設や拡充を決定している。税制優遇などで政策目的が達成しやすくなるというメリットがある一方、税収減につながるほか、税負担が不公平となるなどといった批判も多い。そして、いったん租特が設けられると廃止しにくいなどの弊害あるだけに、国民としては注視していくべき法なのだ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ