国税庁が公表した、平成27事務年度(2015年7月から2016年6月まで)の1年間に実施された海外投資などを行っている富裕層に係る調査を見ていくと、申告漏れ所得金額が前年に比べ、6割増の168億円まで増加していることが分かった。

平成27事務年度(2015年7月から2016年6月まで)の1年間に実施された海外投資などを行っている富裕層に係る調査は、565件(前年度比26.1%増)に行われ、81.6%に当たる461件(同27.3%増)から168 億円(同60%増)の申告漏れ所得金額を把握。43億円(同72%増)を追徴している。

海外投資を行っている富裕層の1件当たりの申告漏れ所得金額は、富裕層全体の実施調査で明らかになった1179万円よりも高額で2970万円(同27.1%増)。追徴税額は756万円(同35%増)となっている。

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各局をみていくと非違割合の高い順に、名古屋国税局68件のうち非違件数58件(85.2%)、関東信越国税局56件のうち、非違件数46件(82.1%)東京国税局262件のうち非違件数209件(79.8%)、広島国税局49件のうち非違件数39件(79.6%)と関東信越国税局と名古屋国税局は全国平均81.6%を超える割合いで申告漏れを指摘されている。1件あたりの申告漏れ所得額を見ていくと、東京国税局3849万円、追徴税額1036万円、名古屋国税局3256万9000円、追徴税額1064万6000円と全国平均を大きく上回る。金沢国税局では、実施調査に入った5件すべてで非違を指摘している。

出典:国税庁HP報道発表資料「平成26~27事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」を引用し作成。

富裕層の課税対策強化へ

自民党と公明党が公表した、「平成29年度税制改正大綱」によると、相続税や贈与税の課税逃れ目的の海外移住者対策として、これまでは海外に住んで5年超居住していれば、相続税や贈与税は課税対象外だったものが、今回の見直しで、移住後10年以内は日本の税金がかかることが盛り込まれた。

国税庁が公表した「平成 27事務年度における租税条約等基づく情報交換実績の概要」によると、平成30(2018)年9月から、諸外国からその国の金融機関等に保有されている日本居住者の金融口座情報が提供されることとなり、国税庁においては、海外にある金融資産の把握に活用する。

出典:国税庁「平成 27事務年度における租税条約等基づく情報交換実績の概要」より引用

さらに、租税条約等に基づく情報交換の枠組みの拡大・強化も図られており、二国間・地域の租税条約等及び多国間の執行共助条約を併せると、発効済みの租税条約等の適用対象国・地域は102か国・地域となっている(平成28年11月1日現在)。国税庁は、金融資産に関する情報交換や租税条約等のネットワークを通じて富裕層の課税対策を着々と強化している。

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