税理士として登録するために必要な手続きを解説していきます。税理士試験に合格してもすぐに税理士と名乗ることができません。税理士となるためには登録申請を行い、認められる必要があります。
この記事の目次
税理士登録するための資格
税理士として登録するためには、一定の資格が必要です。
原則として、税理士として登録するためには税理士試験に合格している必要がありますが、それ以外にも税理士として登録可能なケースがあります。
また、税理士として登録するためには、一定期間の実務経験も必要となります。
以下では、税理士として登録するための条件を詳しく解説していきます。
税理士となる資格
税理士となる資格を持つ方は以下のとおりです。
- 税理士試験に合格した人
- 税理士法第6条で定められた試験科目全てについて、同法第7条または第8条の規定により税理士試験が免除された人
- 弁護士(弁護士資格を持つ人も含む)
- 公認会計士(公認会計士資格を持つ人も含む)
公認会計士は、公認会計士法第16条第1項で規定された実務補習団体などが実施する研修の中で、財務省令で定められた税法に関する研修を修了した公認会計士を指します。
ただし、1.および2.の人については、租税に関する業務または会計に関する業務で政令で定められたものに従事した期間(実務経験)が合計で2年以上必要です。
実務経験
前の見出しで言及した1.及び2.の方について、必要な実務経験に該当する事務の内容については以下の表のとおりです。
なお、実務経験の期間は税理士試験の合格の時又は試験全科目免除の時の前後は問わないことになっています。
・実務経験に関する参考条文・通達
税理士法第3条第1項 | 税理士法施行令第1条の3 | 税理士法基本通達 |
租税に関する事務 | 税務官公署における事務のほか、その他の官公署及び会社等における税務に関する事務 (3-1) | |
会計に関する事務で政令で定めるもの | 貸借対照表勘定及び損益勘 定を設けて経理する会計に 関する事務(特別な判断を要 しない機械的事務を除く)※※特別な判断を要しない機械的事務とは、簿記会計に関する知識がなくともできる単純な事務をいい、電子計算機を使用して行う単純な入出力事務もこれに含まれる。 (3-2) |
簿記の原則に従って会計帳簿等を記録し、その会計記録に基づいて決 算を行い、財務諸表等を作成する過程において簿記会計に関する知識 を必要とする事務 1. 簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務 2. 仕訳帳等から各勘定への転記事務 3. 元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判 断する事務 4. 決算手続に関する事務 5. 財務諸表の作成に関する事務 6. 帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検す る事務 (3-3) |
(引用: 税理士登録の手引 )
実務経験期間として算入できる事項については厳格に定められているので注意してください。
また、実務経験期間の算出に際しては、以下の事項に注意してください。
- 実務経験期間が通算2年以上とは、通常の勤務時間内で税務または会計に関する業務を行っていた期間を日付に従って計算し、2年以上になる場合を指します。
- 実務経験に該当する業務以外のものが含まれる場合は、実務経験に該当する業務に携わった時間を取り出して累計計算を行います。
- 一つの職場で実務経験期間が満たされない場合は、複数の職場での勤務期間を合計して実務経験期間とすることができます。
- 非正規雇用(アルバイトなど)で行っている期間を実務経験に含めるには、勤務日数や勤務時間などの実情に応じて税務または会計に関する業務に従事した時間を累積計算します。
- 実務経験期間の累積計算は以下の基準に従って算出します。
これを超える従事時間は、2年未満の期間で2年相当の勤務時間を累積できるため、累積計算の対象から除外されます。
- 1日の従事時間は7時間を上限とします。
- 1カ月の従事時間は154時間を上限とします。
- 2年相当の従事時間は3,696時間(154時間×24カ月)とします。
税理士登録に必要な実務経験とは?
税理士として登録するためには、実務経験が欠かせません。
実務経験として算入できる業務、参入できない業務は明確に定められているので注意してください。
実務経験となる業務
以下のような業務が実務経験としてカウントされます。
- 税務官公署の事務や、他の官公署や企業での税務業務
- 貸借対照表および損益勘定を用いて、会計処理を行う業務
- 仕訳帳などから各勘定科目への転記業務
- 元帳を調整し、日次または月次報告を作成し、記録の正確性を確認する業務
- 決算処理に関する業務
- 財務報告書の作成に関する業務
- 帳簿システムを設計し、原始記録(売上伝票やレシートなど)と帳簿入力事項を突き合わせる業務
これらの業務に従事していた期間が試験前であっても、実務経験に含まれます。
実務経験にならない業務
会計事務所で経理業務に従事していても、簿記会計に関する知識が不要な事務作業や、電卓を利用した簡易な入出力業務は、実務経験として認められません。
これは、実務経験の基準として専門的な知識や技能が必要な業務が対象となるためです。
また、実務経験の計算においては、原則として通常の労働時間内で行われた業務のみがカウントされることに注意が必要です。
つまり、通常勤務時間外に行われる時間外労働(いわゆる残業)は実務経験に含まれないとされています。
このように、実務経験を評価する際には、専門的な知識や技能が必要な業務に焦点を当てるとともに、通常の勤務時間内で行われた業務に限定してカウントされることが一般的です。これにより、実務経験の質と量を適切に評価することが可能となります。