公認会計士試験には、短答式試験と論文式試験という2つの形式の試験があります。この記事では、論文式試験について基本情報から勉強方法まで徹底的に解説していきます。
この記事の目次
公認会計士の論文式試験とは?
まずは、公認会計士試験の論文式試験がどのような試験なのかについて詳しく解説していきます。
公認会計士試験での論文式試験の概要
公認会計士試験の論文式試験は、短答式試験に合格した受験生が受けることができる試験です。
論文式試験は、以下の4つの必須科目と1つの選択科目から構成されています。
<試験科目>
- 会計学(財務会計論と管理会計論)
- 監査論
- 企業法
- 租税法
- 選択科目
各科目の配点は以下の通りです。
<科目毎の配点>
- 会計学:300点
- 監査論:100点
- 企業法:100点
- 租税法:100点
- 選択科目:100点
租税法は論文式試験のみの試験科目であり、他の必須科目は短答式試験と共通しています。
あとでも説明するように、論文式試験の合格率は短答式試験と比較すると若干高くなっていますが、依然として厳しい試験です。
論文式試験に合格すると、公認会計士として認定されるための最後のステップである実務経験要件を満たすことができます。
この要件を満たした後、公認会計士として認定され、専門的な会計・監査・税務サービスを提供することができるようになります。
論文式試験の合格率は?
公認会計士試験の仕組み上、短答式試験に合格すると論文式試験の資格が与えられます。
令和4年度に実施された論文式試験の合格率は7.7%(合格者/願書提出者)と大変難しい試験となっていました。
ちなみに、令和4年度における第1回短答式試験の合格率は約12.05%(1,199人/9,949 人)となっています。
短答式試験免除者を除いて論文式試験に合格できたのが7.7%となっているので、論文式試験がかなり難しい試験であることがわかるはずです。
なお、短答式試験の合格者は、2年間限定で短答式試験をスキップできる救済措置が用意されています。
論文式試験の効果的な勉強法と対策
論文式試験は、うえで説明したように合格率が低い試験です。
合格するためには、正しい勉強法で適切な対策を行う必要があります。
以下では、勉強方法のポイントについて解説していきます。
短答式試験との違いを理解する
論文式試験は、マークシートの短答式試験とは違い、論述が必要な試験です。
そのため、論文式試験では、長文の作成が求められます。
ほとんどの人は、日常的に文章を書くことに慣れていません。
また、論文式試験で高得点を獲得できるような文章作成が自然にできるはずもありません。
したがって、論文式試験においては以下の2つの練習が重要となります。
- 文章を書くこと
- 得点につながる文章構成を作成すること
文章を書く練習をする
短答式試験において、十分に知識をインプットしている場合でも、論文式試験でなかなか得点できないという人は少なくありません。
その理由は、アウトプットの練習を十分にしていないからです。
あなたにも考えていることをうまく言葉にできない経験があると思います。
論文式試験の勉強を始めた頃、この感覚に悩まされることが多いです。
頭で理解していても「専門用語が思い浮かばない」「具体例を上手に表現できない」といった問題が生じるケースが多いです。
短答式試験に合格するだけの基礎知識があるのに文章が書けないというのは、単にインプットが不足しているだけではありません。
たくさんのインプットを行いながら、なかなか文章が書けないというのはよくあるものです。
うまく表現できない点を自分で整理してアウトプットする練習が必要となります。
得点に繋がる解答パターンを理解しておく
また、論文式試験では、得点につながる文章構成を作成することが重要です。
専門用語や具体例を書けるようになっても、それだけで得点が得られるかどうかは別の問題です。
説得力のある文章でなければ、点数を獲得することは難しくなります。
得点を得るためには、自分が問題を理解し、解答していることを試験委員に効果的に伝えなければなりません。
たとえば、適切な専門用語を使っていても、文章が支離滅裂だと試験委員に伝わりません。
伝わらなければ当然、点数は得られないのです。
試験委員に伝わるようにするためには、適切な文章構成が必須です。
特に試験委員は学者であるケースが多くなっています。
そのため、問題の背景、根拠、結論を適切に配置し、初めて試験委員に理解される文章を書かなければなりません。
以上のように、適切な文章構成を練習することが重要です。
論文式試験においては、専門知識だけでなく、文章作成能力も鍛えることが求められます。文章を書く練習を通じて、徐々に試験委員に伝わる文章を書けるようになりましょう。
このスキルは、論文式試験に合格するだけでなく、将来のキャリアにも大いに役立ちます。
過去問題の活用法
過去問を使うことには、次の3つのメリットがあります。
まず、各科目の論点ごとに「どのレベルまで実力を上げればよいのか」という到達点がわかります。
次に、重点的に克服すべき苦手分野を把握することができます。
そして、本試験の雰囲気や出題形式に慣れることができます。
到達点を把握する
公認会計士試験は科目数が多く、一度の試験で複数科目を受験する必要があるため、難易度が高く、学習に要する時間が多いことが特徴です。
そのため、過去問を解くことに疎くなってしまう受験生も多いようです。
しかしながら、公認会計士試験の問題は試験委員が作成します。
テキストの解説や資格スクールの講師の説明とは異なる傾向があります。
そのため、本試験の雰囲気や出題形式に慣れていない受験生は不安を感じることがあるでしょう。
苦手分野を克服する
公認会計士試験では、全科目全分野を実務レベルで深く理解することは現実的ではありません。
そのため、限られた時間の中で効率的に学習を進めるためには、過去問から肌感覚として論点ごとに要求される力や重点的に克服すべき苦手分野を把握することが重要です。
過去問を解く際には、本試験は満点を取らなければならない試験ではない、ということを意識することが重要です。
過去問には本番で解けなくてもよい問題が含まれているため、それを見極めることが必要です。
過去問の正しい使い方は、学習習熟度に合わせて段階的に使い方を変えることです。
最初の段階では、解ける・解けないはあまり問題ではありません。
ゴールを意識して取り組み、肌感覚として最終的に解けるようになるレベルを目指します。次の段階では、基礎的な演習を終えた後に過去問に取り組み、本試験で通用する実力があるのかを確認します。
この段階で重点的に克服すべき苦手分野を把握し、その論点に割く必要がある勉強時間の指標が見えてきます。
本試験の雰囲気や出題形式に慣れておく
公認会計士試験の合格には、おおよそ3,500時間の勉強が必要と言われています。
そのため、効率的かつメリハリのある勉強が必要です。
過去問を使うことはその一つのツールとなります。
初めて過去問を見ると、解ける気がしない問題が多く不安になることがあります。
しかし、適切なトレーニングを繰り返していくことで必ず解けるようになりますので、安心して取り組んでください。
過去問を使う際には、正しい使い方を確認し、自分に合った段階的な取り組み方をすることが重要です。
過去問から学ぶことを活かし、効率的かつメリハリのある勉強をして公認会計士試験に合格しましょう。
論文式試験対策のための参考書と教材
論文式試験対策のためには、論文式試験対策用の以下のような教材を利用するのが一般的です。
- 論文式試験対策用テキスト
- 論文式試験対策用問題集
- 論文式試験の過去問
- 論文式試験用の模擬試験
- 会計法規集