政府の、退職金への課税制度の見直し案が議論を呼んでいる。勤続年数に応じた税負担の軽減をなくし、成長分野への労働力移動を促す狙いだが、実質長く勤める人への増税となるので、批判も多い。
政府は16日、経済財政運営の指針である「骨太の方針」を決定しましたが、その中に盛り込まれた退職金への課税制度の見直し案が、議論を呼んでいる。
どう見直そうとしているの?
政府の「新しい資本主義実現会議」で話し合われ、以前から話題となっていたこの見直し案。
たとえば最近話題のAIなどの成長分野への労働力移動を促すため、1つの会社に長く務めた方が有利になる、現行の退職金の課税制度を見直そうというのだ。
現行の税制は、税金が高くならないよう給与所得などとは別に退職金だけで計算がされ(分離課税)、そこからの控除があり、さらに1/2の税額になるといったかなり優遇されたものになっている。
その控除の部分が、現行では勤続20年を超えると1年当たりの控除額が40万円から70万円に引き上げられるのだが、今回政府は、そうした勤続年数での差を設けず、一律にするか別の制度を設けるという方向性を示したのだ。
その退職所得控除のおかげで、1つの企業に長く勤めれば退職金の税金が安くなるので転職はしない、残り何年の勤務で退職金の税金が安くなるのでこのタイミングで転職はしないといった行動を取る人が増え、成長分野への労働力移動が阻まれると、政府は主張しているわけだ。
その退職課税見直し案にはどんな批判が?
しかしこの見直し案には、批判も少なくない。
退職金は、在職中の給与の後払いや退職後の生活資金という意味を持つ。
たとえば退職金で家のローンの返済を考えていた人、また退職金での節税を前提に在職中の給与所得を抑えていた役員や社長などは、現行の制度が変われば人生設計が狂ってしまうだろう。
さらには、iDeCoの一時金受け取り、企業型DC(企業型確定拠出年金)の一時金受け取り、確定給付企業年金の一時金受け取り、小規模企業共済金の一括受け取りにも影響が出る可能性もあり、そうなれば、老後2000万円問題に対策を取っている人たちからの反発も招きかねない(政府はiDeCoを推し進めたいので、もし退職金が増税になっても、iDeCoにはなんらかの減税措置を取るのではないかという予想もある)。
まとめ
政府は、2023年末の税制大綱に向けて具体的な制度設計や影響評価を行っていくことになる。
ていねいに議論をし、企業や社員に対して説明責任をきちんと果たしてくれることを願いたい。
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