令和5年6月30日に令和5年度税制改正に基づく国税庁の電子帳簿保存法取扱通達の一部改正が行われ、猶予措置の「相当の理由」について公式の解釈が明らかになりました。

この記事の目次

1. 電子取引データ保存制度

メールやクラウド等の電子で請求書や領収書等の交付を行うなど、電子取引を行った場合の電子データについては、令和3年度の電子帳簿保存法の改正において、令和4年1月1日以後はその電子データを要件に従って保存しなければならないこととされていました。

しかし、令和4年度改正において、認知度が低い、システム対応やワークフローの整備などの準備が間に合わないなどの声があがり、令和4年1月1日から令和5年 12 月 31 日までの間に行う電子取引については、要件に従って保存をすることができなかったことについて、所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、その保存義務者が税務調査等の際にその電子データの出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等により保存すること、つまり従来どおりの紙での保存を可能とする宥恕措置が適用できることになっていました。

しかし、この措置も令和5年で終了します。

2. 令和6年からの電子取引データ保存

令和5年度改正では、システム対応が間に合わなかったことにつき相当の理由がある事業者等に対する新たな猶予措置を設けることとされました。

具体的には、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、

i. 申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて「相当の理由」があると認め(保存義務者からの手続は不要)

かつ、

ii. その保存義務者が質問検査権に基づくその電磁的記録のダウンロードの求め及びその電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限られる。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている

場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとされました。

しかしながら、i. の「相当の理由」については、これまでその範囲が明らかにされておらず、人により様々な解釈が行われ、どこまでの理由が認められるのか、関心が高かったところです。

令和5年6月30日に令和5年度税制改正に基づく国税庁の電子帳簿保存法取扱通達の一部改正が行われ、電子帳簿保存法一問一答も改訂され、公式の解釈が明らかになりました。