簿記試験は、経理や会計の基本的なスキルを評価する資格試験の一つです。簿記試験には3種類あり、職業別に簿記を区分すると2種類あるなど複雑です。本記事では、簿記の種類や特色についてご紹介します。

この記事の目次

簿記試験は3種類

簿記試験には「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の3種類があり、それぞれ内容や級が異なります。

3種類の級をそれぞれまとめると以下のようになります。

日商簿記

  • 1級
  • 2級
  • 3級
  • 簿記初級
  • 原価計算初級

全経簿記

  • 上級
  • 1級
  • 2級
  • 3級
  • 基礎簿記会計

全商簿記

  • 1級
  • 2級
  • 3級

以降ではそれぞれの簿記試験の概要をまとめていきます。

日商簿記

日商簿記は日本商工会議所が主催する、簿記の検定試験です。

日商簿記検定試験が正式名称で、簿記検定の中では最もよく知られているものです。

この試験は簿記の基本的な知識や技能を測定することを目的としています。

簿記検定試験の中で最も高い認知度を持っているのが日商簿記です。

多くの企業や学校での採用試験やカリキュラムに取り入れられています。

日商簿記には、1級、2級、3級、簿記初級、原価計算初級の5種類の試験があり、3級から受験するのが一般的です。

各級によって試験の内容や難易度は異なり、例えば、1級の試験内容は「商業簿記、会計学」と「工業簿記、原価計算」の2つに分かれています。

受験資格は特になく、誰でも受験可能です。

日商簿記は、基本的な簿記の知識や技能を証明する資格です。

特に、経理や財務関連の仕事を目指す人にとっては、この資格は重要なステップとなることが多いです。

簿記1級はペーパー試験のみで年2回、簿記2級3級はペーパー試験が年3回でネット試験は随時行われています。

初級・原価計算初級はネット試験のみで随時行われます。

ネット試験の開催は各試験会場ごとに異なるので直接問い合わせてください。

全経簿記

全経簿記は全国経理教育協会が主催する簿記の検定試験です。

簿記能力検定が正式名称で、この試験は簿記の知識や技能を評価・認定することを目的としています。

全経簿記には、上級、1級、2級、3級、基礎簿記会計の5種類の試験があります。

主に経理専門学校に通う学生が受験する傾向がありますが、社会人や他の学生も受験することができます。

上級試験は年2回で、上級以外の試験は年に4回開催されています。

全経簿記は、簿記の基本的な知識や技能を身につけたい人、特に経理や会計の専門職を目指す学生や社会人にとって、有用な資格となります。

全商簿記

全商簿記は全国商業高等学校協会が主催する検定試験で、全ての級で年2回開催されます。

簿記実務検定試験が正式名称で、この試験は簿記の基本的な知識と実務技能を評価・認定するのを目的としています。

全商簿記には、1級、2級、3級の3つのレベルがあり、学校で学習する簿記の内容を網羅しており、基礎的な内容が中心となっています。

主に商業高校の学生を対象とした試験ですが、誰でも受験が可能です。

全商簿記1級の取得を推薦入試合格の最低ラインとする大学や短大も存在するため、全商簿記は、商業高校のカリキュラムに合わせて設計されており、学校の授業で学んだ内容を試験で確認することができます。

また、商業高校で簿記を学び全商の資格を取得している場合、同じレベルの日商簿記の資格も取得しておくと、就職活動の際にはより評価されやすくなるでしょう。

各簿記試験の難易度

「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の、それぞれの難易度について紹介します。

日商簿記の級ごとの難易度

日商簿記1級の難易度は非常に高く、高度な商業簿記と工業簿記、会計学や原価計算、会計基準や企業の会計に関わる法令の知識が必要です。

キャッシュフロー計算書なども含まれるため非常に試験範囲が広く、合格率も10%ほどです。

日商簿記2級は、企業の経営分析を行ったり会計実務をこなせるレベルです。

商業簿記と工業簿記の全般的な知識が必要になる中程度の難易度と言えるでしょう。

日商簿記3級は「簿記の基本の原理」「取引の処理の仕方」「決算書類の作成方法」など、商業簿記の基本的な知識が求められます。

簿記初級は簿記の基本知識の修得が求められるレベルで、難易度は低めです。

原価計算初級は、簿記試験の中で原価計算に特化した入門レベルの試験です。

原価計算の基本的な概念や手法に関する知識を問うもので、製造業や工業簿記の初歩的な部分を学ぶ際のステップとして位置づけられています。

高度な計算や複雑なケーススタディは含まれていないため、簿記の初級レベルの試験としては比較的取り組みやすい部類に入るでしょう。

全経簿記の級ごとの難易度

全経簿記上級は「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」の計4科目で、難易度は日商簿記1級より比較的簡単とされます。

大企業の複雑な取引や会計処理、連結決算、外貨取引、金融商品取引などの高度な内容が中心です。

また、製造業の詳細な原価計算方法や、標準原価法、直接原価法などの高度な計算方法に関する知識も求められます。

しかし、日商簿記1級の合格率が約10%に対し、全経簿記上級は約15%ほどです。

合格率は日商簿記1級よりも高い傾向があります。

全経簿記1級は「商業簿記・会計学」「工業簿記・原価計算」の2科目です。

「商業簿記・会計学」は株式会社の高度な会計処理、連結決算、税務会計、外貨取引などの複雑な取引の処理方法に関する知識が中心です。

「工業簿記・原価計算」は製造業における原価計算の方法や、材料、労務、製造間接費の計算、標準原価法、直接原価法などの原価計算方法に関する詳細な知識が求められます。

全経簿記2級は「商業簿記」「工業簿記」の2科目です。

「商業簿記」は中小企業を中心とした一般的な会計処理や取引の処理方法、決算書の作成方法などの基本的な知識が中心です。

個人商店から株式会社の基本的な取引までの範囲が含まれます。

「工業簿記」は製造業の基本的な原価計算の方法や、材料、労務、製造間接費の基本的な計算方法に関する初級的な知識が必要です。

全経簿記3級は小規模会社における「商業簿記」の問題が出され、基礎簿記会計は簿記の基本を身に付けていることが求められる試験です。

全商簿記の級ごとの難易度

全商簿記1級は「会計」と「原価計算」に科目が分かれています。

「会計」は株式会社における高度な会計処理を中心に、会計法規や企業で行われる業績測定などが出題されます。

連結決算や外貨取引、税務会計などの複雑な取引の処理方法も含まれています。

「原価計算」は製造業の簿記(工業簿記)に基づき、製品の製造に要した金額(原価)の計算手続きに関する問題が出題されます。

材料、労務、製造間接費の計算や、標準原価法、直接原価法などの原価計算方法に関する知識が必要です。

難易度は高く、合格率は会計が約40%、原価計算が約48%で両方合格しなくてはならないのが特徴です。

商業簿記と工業簿記の高度な知識と技能を問う問題です。

全商簿記2級は商業簿記からの出題で、3級の内容に加えて株式会社の基本的な会計処理が含まれています。

資本の変動、株式の発行や取得、配当など、株式会社特有の取引の処理方法に関する問題で、合格率は約56%です。

個人商店と株式会社の基本的な会計処理の問題があります。

全商簿記3級は商業簿記の1科目で、個人商店を想定とした商業簿記の取引や記帳、決算などの基本的な会計処理が問われます。

合格率は約59%です。