物価高騰が進む中で利益を確保するためには、食材やドリンクの原価管理が必要不可欠です。そこで今回は、原価管理のポイントを紹介します。

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原価管理が利益確保の生命線!?

神奈川で居酒屋を3店舗経営しているJさんが、税理士から見せられた試算表を確認すると、原価率が昨年度よりも5%も高くなっていました。

日々のお店の運営業務に追われて、月末にやる食材やドリンクの在庫の金額を確認するための棚卸業務を行えていなかったものの、現場で見ている限り調理方法などには変更はなく、原因が分からずに悩んでいました。

牛肉や小麦、食用油をはじめ、多くの食材の物価高騰やテイクアウト・デリバリーの活用、アルコール需要の減少などが進む中で、飲食店の原価率がコロナ前と比べて高くなってきています。

飲食店において、原価率を適正値以内に管理することは経営の生命線です。

広告費や家賃などの固定費とは異なり、食材やドリンクは売上が増えると一緒に増えていく変動費だからです。

原価率が高くなると、当然売上が増えても手元に残る利益は少なくなってしまうので、原価率を低く抑えるための「原価管理」が必要となります。

原価率とは、売上高に対する売上原価の割合のことを言います。

売上原価とは売上に直接かかった費用のことで、飲食店の場合は食材やドリンクの仕入価格に、棚卸額(在庫)を考慮したものになります。

原価率は、以下の式で求めることができます。

  • 原価率(%)= 売上原価(期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高)÷ 売上高 × 100

飲食店の原価率については、自社の過去平均と比較するだけでなく、業種ごとの平均値と比較して判断することも重要です。

業種ごとの平均値として日本政策金融公庫の「創業の手引き+」から公表されている下記の一覧や月間食堂などの雑誌に公表されている同業者のお店の情報なども参考になります。

まずは自分のお店の原価率の適正値を把握することが重要です。

<業種別の原価率>

参考:創業の手引き+|日本政策金融公庫

原価率を見る際は、単月だけでなく、2カ月平均の原価率で見ると正しい数値が見えると言われています。

特に棚卸を行っていない場合は、その影響を少なくするために、必ず2カ月平均の原価率で見るようにすべきでしょう。

原価率を管理できているお店は、2カ月平均で見ることで原価率の上下の変動が小さくなります。

これに対し、原価率を管理できないお店は原価率の上下の変動が大きくなります。

原価率が適正値よりも高いことと、毎月の原価率が安定しないことは別問題なので、原価管理を行う場合には両者を区別して改善していくことも重要です。

また原価率を見る際には、食材の原価率とドリンクの原価率に分けて算定すると、具体的な改善活動につなげやすいです。

そのためには食材とドリンクの原価だけでなく、食材売上とドリンク売上を分けて把握する必要がありますが、その2つを分ける際には、ドリンク売上を把握し、それ以外の売上は全て食材売上にするなどの割り切りが必要になります。