2023年度の4大監査法人(トーマツ、あずさ、新日本、あらた)の決算について、業績、クライアント数及び人員数に基づくランキングを見ていきます。

この記事の目次

2023年8~9月にかけて有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)、有限責任あずさ監査法人(以下あずさ)、有限責任EY新日本監査法人(以下新日本)及び有限責任PwCあらた監査法人(以下あらた)の決算が発表されています。

今回は2023年度決算に基づく4大監査法人のランキングをご紹介します。

1. 業績ランキング

(1)売上

まずは売上(業務収入)のランキングを見ていきます。

(単位:億円)

◀左右にスクロールします▶
2023年度
うち、
監査業務 非監査業務
トーマツ 1,428 893 535
あずさ 1,117 875 242
新日本 1,095 925 170
あらた 610 297 313

* トーマツは5月決算、あずさ、新日本及びあらたは6月決算

* 数字は各法人の業務及び財産の状況に関する説明書類より(*1)

 

売上では1,428億円を計上したトーマツが昨年度に引き続き1位となっています。

それに続くのがあずさで1,117億円、3位が新日本で1,095億円、4位が610億円のあらたとなっています。

2022年度との比較では以下のようになっています。

(単位:億円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ 1,388 1,428 +40 +3%
あずさ 1,111 1,117 +6 +1%
新日本 1,064 1,095 +31 +3%
あらた 565 610 +45 +8%

順位は昨年度から変更はなく、2018年度以降はトーマツが1位をキープしています。

なお前期比で見ると各社とも売上を伸ばしていますが、あらたが45億円(+8%)の増収と、増収幅が大きくなっています。

 

(2)監査業務

ⅰ.監査業務収入

売上のうち、監査法人の主要な業務である監査収入を見てみます。

(単位:億円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ 861 893 +32 +4%
あずさ 854 875 +21 +2%
新日本 897 925 +29 +3%
あらた 282 297 +15 +5%

トップは925億円を計上した新日本です。

新日本は前期比29億円(+3%)の増収となり、監査業務だけで900億円を超え、1,000億円の大台が視野に入っています。

2位は893億円のトーマツ、そして3位は875億円のあずさとなっており、最後に297億円であらたが続きます。

監査業務収入のランキングも前期と変わらず、1位新日本、2位トーマツ、3位あずさ、4位あらたとなっています。

なお新日本、トーマツ、あずさの監査業務収入は875~925億円であり、50億円程度の差にとどまっていますが、4位のあらたはトップ新日本の3割程であり、その差は600億円超となっています。

ⅱ.1社あたり監査業務収入

監査業務について、1社あたりの単価を見ていきます。

(単位:万円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ 2,660 2,789 +129 +5%
あずさ 2,400 2,535 +136 +6%
新日本 2,418 2,485 +67 +3%
あらた 2,437 2,541 +104 +4%

* 1社あたり監査業務収入 = 監査業務収入÷(前期末監査クライアント数と当期末監査クライアント数の平均)

 

1位はトーマツで2,789万円となり、2位あらたが2,541万円、3位あずさが2,535万円、そして4位が新日本で2,485万円です。

前期4位だったあずさは136万円(+6%)上昇したことで、新日本を抜き3位となっています。

トーマツが他法人より1割ほど高く、あらたとあずさが2,500万円台、新日本が2,400万円台ですが、単価面ではそれほど大きな差はありません。

(3)非監査業務

続いて成長分野である非監査業務を見ていきます。

ⅰ.非監査業務収入

(単位:億円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ 527 535 +8 +2%
あずさ 257 242 △15 △6%
新日本 168 170 +2 +1%
あらた 283 313 +30 +11%

非監査業務の売上トップはトーマツで535億円となっています。

それに続くのがあらたで313億円、そして3位があずさで242億円、4位が新日本で170億円となっており、順位は前期と変わっていません。

非監査ではトーマツが他の3法人を大きく引き離しており、監査業務では後塵を拝するあらたが2位につける構図にも変化はありません。

なお前期比で見ると、あらたが30億円(+11%)と2桁の増収を記録する一方、トーマツと新日本は微増、あずさは15億円(△6%)の減収決算となっています。

2022年度はトーマツが122億円(+30%)、あずさが37億円(+17%)、新日本が14億円(+9%)、あらたが14億円(+5%)と、各社が大幅な増収決算だったことを鑑みると、非監査業務の伸びは落ち着いてきた印象です。

ⅱ.1社あたり非監査業務収入

続いて非監査業務の1社あたり単価を見ていきます。

(単位:万円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ 1,775 1,929 +154 +9%
あずさ 1,272 1,262 △10 △1%
新日本 835 902 +67 +8%
あらた 2,318 2,554 +237 +1%

* 1社あたり非監査業務収入 = 非監査業務収入÷(前期末非監査クライアント数と当期末非監査クライアント数の平均)

 

売上単価でみると、1位はあらたの2,554万円、2位がトーマツで1,929万円、そして3位あずさ1,262万円、4位新日本902万円と続きます。

あらたの単価は2,000万円を超え、2位トーマツの30%超、4位新日本の3倍弱と頭一つ抜けており、また唯一2桁の伸びを見せています。

一方、新日本は前期比で上昇こそしているものの、1位あらた、2位トーマツの半分以下にとどまっています。

ⅲ.非監査業務収入割合

全体の収入に占める非監査業務の割合は以下となっています。

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減
トーマツ 38% 37% △0.5pt
あずさ 23% 22% △1.4pt
新日本 16% 16% △0.2pt
あらた 50% 51% +1.2pt

* 上が非監査業務割合(非監査業務収入÷業務収入)、下が監査業務割合(監査業務収入÷業務収入)

 

非監査業務の割合が最も高いのは51%のあらたであり、半分を超えています。

それに続くのがトーマツで37%、3位あずさが22%、4位新日本が16%となっています。

2023年度はあらたが非監査売上を伸ばしたことで非監査業務の割合が増加した一方、トーマツ、あずさ及び新日本は微増もしくは減収となったことで割合が低下しています。

(4)営業利益、営業利益率

営業利益を見ていきます。

(単位:億円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ
10 14 +4 +39%
0.7% 0.9% +0.2pt
あずさ
14 7 △6 △45%
1.2% 0.7% △0.6pt
新日本
3 1 △2 △78%
0.3% 0.1% △0.2pt
あらた
18 11 △7 △41%
3.2% 1.7% △1.4pt

営業利益1位は14億円でトーマツ、それに続くのが11億円のあらた、3位が7億円であずさ、そして1億円の新日本が4位となっています。

営業利益率で見ると、1位は1.7%のあらた、2位が0.9%でトーマツ、3位あずさが0.7%、そして新日本が0.1%で4位となっています。

トーマツは営業増益、かつ利益率も改善していますが、他の3法人は営業減益となっています。

利益率では引き続きあらたが高く、トーマツ、あずさ及び新日本は1%未満と低利益率です。

(5)当期純利益、当期純利益率

最後に当期純利益を見ていきます。

(単位:億円)

◀左右にスクロールします▶
2022年度 2023年度 増減額 増減率
トーマツ
26 22 △3 △13%
1.8% 1.6% △0.3pt
あずさ
3 2 △1 △20%
0.3% 0.2% △0.1pt
新日本
4 4 △1 △14%
0.4% 0.3% △0.1pt
あらた
12 23 +11 +91%
2.1% 3.8% +1.6pt

当期純利益では1位が23億円を計上したあらた、2位が僅差の22億円でトーマツ、3位は4億円で新日本、4位が2億円のあずさとなっています。

当期純利益率では3.8%のあらたがトップ、2位トーマツが1.6%、3位新日本が0.3%、4位あずさが0.2%となっています。

あらたは受取利息及び配当金を18億円計上したことにより増益決算、それ以外の3法人は減益決算となっています。