「ウチの子は16歳未満だから扶養控除は受けられない。教育費がかさむのにツラい」。そう感じている親御さんは多いかと思います。実は、子どもが16歳未満でも受けられる控除があるのです。「所得金額調整控除」と言います。ただし、いくつか条件も。今回は、年末調整に向けて所得金額調整控除についてお伝えします。

この記事の目次

【登場人物】

よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。

まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。

三女ちゃん(以下「三」):鈴木家の三女。小学校5年生。三姉妹でイチバンの甘えん坊。ミミガーとポケモンが大好き。

子が16歳未満だと扶養控除はできない

よ「テーマの決め方が安直…」

三「いいの!前に長女ちゃんが出たから、わたしも出る!」

ま「もうすぐ年末調整の時期だから会計業界の人にとっては予習になるかもよ」

よ「年末調整ね…11歳の子だと扶養控除とれないから年末調整は関係ないんじゃないの」

ま「確かに。扶養控除は扶養親族が16歳以上でないとダメだしね」

よ「鈴木家だと、JK長女ちゃんしか扶養控除の対象にならないよね。子ども3人いても1人分しか節税できない」

ま「今は、他に『16歳未満の子どもがいれば税金が少し安くなる制度』があるのよ」

よ「ホント?なんていうの?」

ま「所得金額調整控除。最大15万円が差し引かれるの」

よ「聞きたい!教えて」

ま「いいよ。ただ、よっちゃん、ガッカリすると思うよ…(汗)」

所得金額調整控除とは?対象となる人を確認

ま「所得金額調整控除って、給与所得控除のおまけみたいなものなの」

よ「給与所得控除…?また難しい用語が出てきた」

ま「いわゆる『サラリーマン経費』よ。私たちみたいな個人事業主だと、所得計算のとき、事業にかかるコストを『必要経費』として計上するでしょ?『サラリーマンにも同じように給与を稼得するためのコストがある』と考えて、給与年収に応じた経費が概算で計算されるの。それが『給与所得控除』」

よ「そうなんだ。『所得金額ナントカがサラリーマン経費のおまけ』というのはどういうこと?」

ま「所得金額調整控除は、給与所得者にしか認められてないの。実際、所得金額調整控除があるときは『給与年収-給与所得控除-所得金額調整控除=給与所得』となるしね」

よ「配偶者控除とか扶養控除みたいな所得控除とは違うってこと?」

ま「そうなの。そして、所得金額調整控除を使えるのはこの2パターンだけ」

よ「なんだよ!自営業夫婦のウチは関係ないじゃん」

ま「だから言ったじゃん。『ガッカリするよ』って。というか『サラリーマン経費』って言った時点で気づこうよ」

よ「うっ」

ま「どうしても受けたかったら、どこかの会社に就職して年850万円を超える給与をもらえばいいよ(棒読み)」

よ「む、無理っす…」

年末調整の対象となる所得金額調整控除の条件

ま「ただ、給与年収850万円を超えているだけでは、この控除を受けられないのよ」

よ「えっ」

ま「この3つの条件のどれかを満たさないとダメなの」

23歳未満の扶養親族がいること

ま「1つ目は年末時点で23歳未満の扶養親族がいること」

よ「扶養控除と似てるね」

ま「扶養控除と似てるけど、所得金額調整控除の大きな特徴は『16歳未満でもOK』ってとこよ」

よ「給与年収が高くてちっちゃい子や小学生、中学生のいる人は対象になるね」

ま「そうなの。年末調整の扶養親族の用紙を書くときは注意した方がいいと思う。『16歳未満の子どもは書くだけムダ』なんて省略すると所得金額調整控除を受けられないから」

よ「ちなみに、子どもの数が多ければ控除される額も増えるの?扶養控除みたいに」

ま「増えないよ。給与年収1000万円なら、23歳未満の扶養親族が1人でも10人でも15万円だけ」

本人が特別障害者であること

ま「2つ目は給与年収850万円超の本人が特別障害者であること」

よ「特別障害者?」

ま「一言で表すと『障害の程度が重い人』。こんな感じ」

特別障害者|国税庁

同一生計配偶者か扶養親族が特別障害者であること

ま「生計一の妻や夫、扶養親族が特別障害者のときも所得金額調整控除の対象になるのよ」

よ「生計一…とは?」

ま「平たく言うと『同じお財布で生活していること』。前に扶養控除の記事でこんな絵を描いたんだけど…覚えてる?」

扶養控除が廃止に?異次元の少子化対策、いくら税金が増えるのか|KaikeiZine

よ「思い出した。『一緒に暮らしているかどうかではない』って話だったね」

ま「ちなみに配偶者や扶養親族の合計所得金額に注意ね。48万円以下でないとダメだから」