今回は、インボイス制度の記事の最後になります。中編では、インボイス発行側の注意点をお伝えしました。後編ではインボイスを受け取る側(仕入側)の注意点を解説します。なお前回に引き続き、正式名称は「適格請求書」ですが、わかりやすくするために「インボイス」と呼ぶことにします。

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今年10月から登録が始まる「消費税のインボイス制度」基本と注意点を解説(前編)

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今年10月から登録が始まる「消費税のインボイス制度」基本と注意点を解説(中編)

■仕入側(受け取るする側)が注意すべき点4つ

インボイスを受け取る側の注意点は次の通りです。

  • ●1:複雑で経理が進まない

インボイス制度開始後、まず想定されるのが請求書や領収書の確認作業です。インボイスであるかどうかの判定に時間がかかると見られます。

「免税事業者と課税事業者を分けるくらいでしょ?」と思うかもしれません。実はそれ以外にもあります。なぜなら経過措置があるからです。

経過措置により、免税事業者からの仕入税額控除はいきなりゼロにはなりません。次のように「段階的に廃止」になります。


【引用元】消費税軽減税率制度の手引き令和3年8月版(国税庁)

令和5年10月以降、100%控除・80%控除・50%控除・0%控除で経理が混乱するおそれがあります。この他、本則課税と軽減税率もあります。インボイス制度が始まっただけで、仕入税額控除がかなり細かくなるのです。

最近は、領収書や請求書をスキャンすれば自動仕訳できるサービスがあります。こういったシステムを使えば、経理処理の負荷は下がるかもしれませんが、完璧だとも言えません。当面の間、仕入税額控除の確認に手間がかかりそうです。

  • ●2:「3万円未満」「やむをえない事情」でもインボイスが必要

今の仕入税額控除は、区分経理した帳簿と必要事項の書かれた請求書等の保管が前提です。ただし、次のような事情のある課税仕入れについては「帳簿の記載のみでかまわない」とされていました。

【引用元】No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存(国税庁)を一部加工

しかし、インボイス制度が始まった後、「帳簿保存のみでOK」とされるのは以下に限られます。

【引用元】インボイス制度に関するQ&A(国税庁)

電車やバスの切符や郵便、一般消費者からの仕入れ、従業員への給料と共に支払われる交通費や出張手当などであれば、帳簿記載だけで済みます。しかし、これ以外は3万円未満でもやむを得ない事情があっても、適格請求書がなければ仕入税額控除ができなくなるのです。