高市早苗総務大臣は2月14日、定例記者会見に続き、平成29年度税制改正法案審議中の衆議院総務委員会でも、「ふるさと納税」における行き過ぎた返礼品について、何らかの是正策を検討することを示唆。今後の動向が注目される。

寄附額2千円超部分は全額控除

ふるさと納税は、当時の福井県知事だった西川一誠氏が地方間格差の是正や過疎の自治体と都市部の自治体の格差是正を推進するための施策として掲げた「故郷寄附金控除」が発端。その後、総務省に研究会が設置され自分を育ててくれたふるさとに貢献する仕組みが税制を通じてできないかという理念に基づき平成20年に制度化された。
創設に当たり、自分が生まれそだった本当のふるさとでなくても制度が利用できる仕組みとされ、自分の選んだ都道府県・市区町村(自治体)に寄附(ふるさと納税)を行った場合、翌年に確定申告を行うことを要件に、寄附額のうち2千円を超える部分について、一定の上限まで原則として下記のとおり所得税・個人住民税の控除が受けられる。

ふるさと納税に係る控除の概要

①所得税‥(寄附金-2千円)×所得控除(所得控除額×所得税率(0~45%(※))が軽減)
②個人住民税(基本分)‥(寄附金-2千円)×10%を税額控除
③個人住民税(特例分)‥(寄附金-2千円)×(100%-10%(基本分)-所得税率(0~45%(※)))
→①、②により控除できなかった額を、③により全額控除(所得割額の2割を限度)
(※)平成50年度までは、復興特別所得税を加算した率となる。

東日本大震災被害者への寄附に利用

ふるさと納税の適用状況をみると、制度創設から3年目まで3万3千人程度の適用だったが、平成23年の東日本大震災の発生時に、東北3県に約7億円を寄附した軽井沢在住の住民をはじめ被災者への義捐金目的とした被災自治体への寄附が増えたことから同年は74万人強にまで増加。その後、一度は下火となったものの、各自治体が寄附のお礼(返礼品)に力を入れたことや、ふるさと納税の内容等を紹介する民間のネットサイトが出来たこと、多くのマスコミが一連の内容を報道したことなどにより適用者が大幅に増加し、それに伴い適用額も増加の一途にある。そして、国も制度の後押しをするため27年度税制改正で、①個人住民税(特例分)の控除限度額が改正前は所得割額を1割から2割に引上げ、②確定申告が不要な給与所得者等が寄附を行う場合は、ふるさと納税先が5団体以内の場合に限りは、ふるさと納税先団体に申請することで確定申告が不要となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の導入などと創設し制度の拡充を図った。
その結果、平成27年におけるふるさと納税額は前年の341億1千万円から1470億円と約4.3倍に、また28年度課税での控除対象額も184億2千万円から998億5千万円と約5.4倍に、適用者数も43万5千人から129万5千人と約3倍に膨れ上がった。