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パナマ文書問題でクローズアップ 日本の国税当局の国際課税体制はここまで整備されている

・・・ところで、小寺先生は現職時代、国税庁の相互協議室で租税条約に基づく交渉をはじめ、移転価格交渉など、国際税務のプロフェッショナルとして活躍されていましたね。

小寺 外国税務当局との交渉については、租税条約上、財務大臣又はその権限を与えられたその代理者としての国税庁長官及び国際担当審議官が、「権限ある当局」とされています。この国際担当審議官の指揮下に国税庁の相互協議室があります。

例えば、相互協議室で行う移転価格課税に関する海外税務当局との交渉は、租税条約上の独立企業の原則などに基づき行います。ここでは、移転価格課税国の当該課税が適切であるか否かを、移転価格算定方法等の法的適用の適格性や事実認定の妥当性等を協議します。移転価格課税国及び当該課税をされた国の双方Face to Faceで議論して行うか、LETTER(文書)交換で行うかの2パターンあります。これが、租税条約に規定する相互協議といわれるものです。なお、この相互協議は、移転価格課税だけでなく、外国法人の支店等へのPE課税(恒久的施設課税)、使用料等の源泉課税に関するものもあります。
これを国税庁の相互協議室の担当官が行います。相互協議を行う双方の国が相手国課税に対して租税条約、国内法、OECD国際課税理論等に基づき詳細にチェックし、検証しながら、議論を進めることとなります。国を代表して協議しているわけですから、真剣勝負です。

・・・現在、国際税務に精通した税理士として、国内外でご活躍されていますが、国税職員時代に「これはやっておいてよかった」ということはありますか。

小寺 ともかく目の前の仕事を一生懸命、粘り強く続けたことが良かったです。国税庁の国際業務部門に配属される前には、国税局や税務署等で法人税調査を経験しました。この経験が国際部門に配属されたときに大いに役立ちました。税務署では法人税調査の厳しさを体験し、東京国税局調査部では、銀行や証券会社、生命保険会社、損害保険会社などの金融機関調査や外資系企業調査を行いましたが、デリバティブなどの金融商品、国際証券&保険取引、財テク、大企業組織の広範囲の業務の内容など幅広い知識を身につけました。人生に無駄はありません。真面目に、目の前の課題と真正面から向き合っていくこと。それが、いつの日か「その道の専門家」としての評価を受けることになると思います。若い方には、一つのことを長く続けることの重要性を強く訴えたいです。私の場合は、法人税調査が今でも、国際税務業務の柱になっております。ただ、誤解して欲しくないのは、現在の国際税務は、所得税、相続税、徴収法のいずれでも発生してきており、どの税法も重要です。それは、海外勤務者への課税、国際相続・贈与問題、徴収共助などの問題の発生でも良く分かります。各税目の国際税務を理解するには、各税法の専門家の先生方が書かれた「税目別 ケースで読み解く!国際課税の税務調査対応マニュアル」(武田恒夫編、ぎょうせい出版)を読まれると良いと思います。

・・・税法だけでなく、民法の理解も重要と指摘されていますね。

小寺 税務の仕事をしていくとき、相続税、徴収法に限らず法人税、所得税でも、日本の民法の理解が非常に重要になります。何故か?それは、現代は企業に限らず個人でも、「契約」がすべての取引の基礎になっているからです。国際取引は、特に歴史上、英米の民族性にその端を発する「契約」が重要になります。国内取引でも最近は契約が重要です。

ところで、税務訴訟では、裁判官は何を先に検討するのでしょう。それは、まず、「契約が虚偽か真実か?」ということです。契約が嘘なのに、税務だけ、それを無視して処理するということは、論理的にあり得ない。従って、民法の契約理論(特に民法94条の「虚偽表示」条項)の理解が不可欠なのです。私の著書「民法的思考による国際税務ケースブック」(法令出版)も参考にしてください。法律家のレベルまでいかなくとも、税務従事者は民法の基礎知識を身に付けるべきです。とくに税理士は、税理士法にあるように、中立の立場で、事案の処理に当たることを法律上要請されています。国内課税取引でも、国際課税取引でも、「この契約は嘘ではないか?」と思ったら、即クライアントに忠告しないと、その後の税務アドバイスは砂上の楼閣で、崩壊してしまいます。気をつけましょう。

著者: 小寺壽成

租税調査研究会 主任研究員

国税庁相互協議室課長補佐、東京国税不服審判所国税審判官、税務大学校教授、米沢税務署長、大和税務署長など歴任。現在、東京地方税理士会税法研究所研究員(法人税法担当)、一般社団法人租税調査研究会主任研究員(国際税務担当)、公益財団法人新聞通信調査会監事。2011年8月税理士登録。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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