業務の効率化・見える化を徹底
具体的な取り組みとして最初に取り組んだのは、業務の効率化・見える化です。
これまでは1人の税理士が記帳代行、税務顧問、帳簿監査、決算、総務などさまざまな業務を行っていて、それによってリードタイムが長くなる、属人化してしまう要因になっていました。
また、こうした働き方は税理士やスタッフにとっても大きな負担となっていました。
これらの課題を解消するために、当法人は分業制を導入。
税務部、記帳代行部、総務部、コンサルティング部、営業部といったセクションに分けました。
そして、書類のスキャンなど資格や専門的なスキルがなくてもできる業務については、パートスタッフさんにお任せすることにしました。
ただこれだけでは一貫性がなくなり、コンセプトである「かかりつけ医の姿勢」から遠のいてしまうため、チームを作り、全体を統括する司令塔的なポジションを設置。
司令塔に情報を集約させることで、チームが担当する案件の管理を行い、各案件についても総合的な視点で判断できるように。
さらに「2マン・セル(2人1組)」で取り組むことで、どちらかが離職した場合も支障をきたさないようにしました。
もうひとつ注力したのが、デジタル化(DX)の推進です。
会計業界はこの数年で急激にDXが進みました。
従来の紙の資料の場合、お客様から送っていただいた資料が届くのを待つ、あるいは直接取りに行くプロセスがありましたが、クラウドに資料を上げることでそうしたプロセスがなくなり、劇的に業務効率が向上しました。
併せてクラウド会計ソフト(「freee会計」)を導入し、一気に業務効率化を進めました。
この取り組みは、当法人の大きな転換期となりました。
ただし、多くの会計事務所はDXの推進をはじめに行う傾向にありますが、その前に組織変革(CX)をきっちり行ってからDX化に取り組むことをおすすめします。
このあたりについては、次回に詳しく触れたいと考えています。
ニーズにマッチしたサービスを効果的に訴求
業務の効率化・見える化と共に、営業力強化も重視しました。
これまで会計事務所のアプローチといえばホームページを作るくらいで、あとは銀行や既存のお客様からの紹介を待つ「受け身の姿勢」が当たり前になっていました。
しかし会計事務所業界全体が厳しい状況に直面しているなか、このままでは成長どころか維持すら難しくなってしまう。
そこで当法人では営業部を設置して、積極的に新規のお客様や案件の獲得に努めました。
もちろん闇雲にアプローチするのではなく、しっかりと戦略を立ててチームとして動くようにしました。
こうした取り組みの一環として力を入れたのが、ブランディングです。
いくらよいサービスを用意しても、ターゲットに認知してもらい、関心を持っていただかなければ意味がありません。
まずはメインターゲットである個人事業主や中小企業の方々が利用しやすいように、ライトな内容で低価格のパッケージサービスを作りました。
さらにネーミングやロゴデザインなどでイメージ作りを行い、主にインターネットでプロモーションを展開。
あわせて営業スタッフによる対面のアプローチを行うことで、相乗効果を狙いました。
それが、記帳代行サービス『記帳MEN』、独立支援サービス『独立PRO』、経理代行サービス『コンタビリテ コンサルジュ』です。
ライトなパッケージサービスを多くのお客様に利用していただくことで、収益の基盤を作り、また専門的なスキルを要する税務代行や経営コンサルディングが必要なお客様には、別途で個別性の高いコンサルティングを提供するフローを構築。
こうした取り組みの効果は早々に現れ、当法人は着実に成長することができました。
これで万事解決となればうれしいのですが、経営はそんなに甘くありません。
少しずつ新たな課題が現れはじめ、解決しなければならない状況に。
どのような課題にどうやって対処したのかは、次回ご紹介したいと思います。
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