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土地相続で 13億円の申告漏れ 売買契約か実勢価格かの判断で争いに

2017年7月12日付けの朝日新聞デジタルの報道によると、元市議会議長の遺族である相続人が、土地の相続をめぐって東京国税局から約13億円の相続税の申告漏れを指摘されているという。追徴税額は重加算税を含め約8億円。報道をはじめ当メディアの独自取材から推察されるのは、当局は、相続人が節税目的で土地評価を不当に下げたか、所有権移転の仮登記が相続手続き後に解除されていることを問題視したものと考えられる。すでに、この争いは国税不服審判所にステージを移して争われている。

朝日新聞デジタルの報道によると、22億円で不動産会社への売却が決まっていた土地の相続をめぐり、被相続人が亡くなる2日前に相続人が売買契約を解除したように装い、相続税の申告額を不当に減らしたとして、東京国税局が相続人に対して、約13億円の遺産隠しを指摘したとされる。

事実関係は、JR東小金井駅(東京都小金井市)前の約3千平方メートルの土地で、この土地は小金井市議を6期務めた土屋一治氏が所有していた。土屋氏は、2014年5月にこの土地を都内のマンション開発会社へと売却する契約を結び、同年10月2日に92歳で死去。契約金額は約22億円だとされる。

ところが、この土地の登記簿には、土屋氏が死亡する2日前に売買契約が解除、相続人数名が土地を分割で相続し、翌年1月に相続人が相続した土地を開発会社に売却したことになっている。

相続税の評価

相続税法第22条(評価の原則)によると、相続により取得した財産は、財産を取得したときにおける、時価で評価することが原則とされている。ここでいう、財産を取得したときとは「相続発生」したときのこと。

相続発生時にすでに売買契約がなされているのであれば、評価財産は土地そのものではなく、まだ貰っていない土地代金の未集金が売買金額となり、相続税申告すべき評価額となる。つまり、相続開始時点で売買契約がなされている土地については、財産評価基本通達による評価ではなく、売買金額により評価を行うわけだ。

一方で、土地の時価での評価となれば、実勢価格よりも低い路線価で評価される。評価額は、公示地価の8割程度となり、都市部では実勢価格との開きはさらに大きい。つまり、現金を持って相続するよりは、土地相続のほうがお得と言うわけだ。

東京国税局の追徴課税処分

そこで当局は、土屋氏の相続人に対して、本来は売却金額で申告すべきところを、解約によって土地の評価額を下げ申告し、差額分を相続財産から不当に減らしたものとして申告漏れと、仮装行為による税のペナルティーとして重加算税の約8億円を追徴課税した。

こうした処分に至るまでの経過として当局は、土屋氏が10月2日の相続発生前までに入院し、動けないか、判断できない状況にあったものと睨んでいると推察される。当メディアの独自取材から浮上してきたのが、土屋氏が理事長をしていた某保育園の議事録などの存在。調べていくと9月30日付けで「職務代理者の確認 理事長の入院について」という内容のものがあり、「役員の交代」として、「理事長 土屋一治 平成26年10月2日退任(死去)、 理事長 某氏 平成26年10月6日就任」とある。9月末には、職務代理者を設けざるを得ない状況があり、売買契約解除も同日というところが不自然だ。つまり、この時点で土屋氏は、かなり重体だったと推察される。国税OB税理士の話では、「おそらく当局は、病院に反面調査しており、死亡直前までの状況を調べているほか、保育園の議事録などもつぶさにチェック、さらには指導監督している行政にもヒアリングしているのではないか」と言う。

また、この土地の登記として、土屋氏が生前の6月13日付で売買に関する条件付所有権移転仮登記が行われており、12月1日付で仮登記抹消、12月8日付で登記、翌年1月9日の売却と同時に登記という手順になっている。この点を見ても、売買契約の解除日後に仮登記抹消が行われていることも当局が疑問視している点と思われる。

納税者の主張

これに対して納税者側は、被相続人が死亡した時点で、開発会社からの支払いが完了していなかったのみならず、相続発生前に契約を解除しているため、土地評価は路線価で行い、評価額は9億円前後となったものと主張。課税当局の処分を不服として、相続人は国税不服審判所に審査請求している。

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