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期限切れ間近、居住用の譲渡特例の適用動向と税制改正

年末の税制改正論議に向けた各省庁の税制改正要望が出そろっている。このうち譲渡所得課税の分野では、マイホームを譲渡した場合の特例3種類について、適用期限の延長が国土交通省から要望されている。いずれも租税特別措置とあって、ニーズを踏まえ、政策効果が期待されてのことだ。そこで、延長が要望されている3種の特例について、最近の適用状況と数ある譲渡特例の中でのポジションについて確認し、今後の税制改正論議の動向を考えてみよう。

期限切れ迎える譲渡特例のポジション

今年(平成27年)の年末で適用期限がやってくる住居系の譲渡所得課税の特例に次の3つがある。

1、「特定の居住用資産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」(租税特別措置法36条の2、以下、買換特例という。)
2、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(租税特別措置法41条の5、以下、買換えの場合の譲渡損失の損益通算等の特例という。)
3、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(租税特別措置法41条の5の2、以下、売り切りの場合の譲渡損失の損益通算等の特例という。)

これらの特例について、平成27年分の申告等に基づく適用状況についてみておく。まず、譲渡特例の適用件数順位のポジションから。条文番号は租税特別措置帆のもの(58条は所得税法)。

表1

(国税庁から情報公開により取得したデータを基に作成)

表1は、平成27事務年度の譲渡所得課税の各種特例のうち譲渡10位までと、今年期限切れを迎える2種類の特例の順位、適用件数等を表にしたもの。ご覧の通り、今年期限切れになる特例のうち、買換えの場合の譲渡損失の損益通算等の特例が4位にランクインしているのに対し、売り切りの場合の譲渡損失の損益通算等の特例は13位、買換特例は15位にとどまっている。

同じマイホームの譲渡に関する特例「居住用財産の譲渡所得の特別控除(租税特別措置法35条、以下、3千万円控除特例という。)が4万4826件でトップとなっており、マイホームの売却時にお世話になる特例で、申告にあたって最もよく出くわすものとみられる。

それに比べれば、買換えの場合の譲渡損失の損益通算等の特例の適用件数は、3千万円控除特例の2割弱、売り切りの場合の譲渡損失の損益通算等の特例は2%弱、買換特例に至っては0.7%程度といった具合で、実務上、適用事案に出くわす確率は、3千万円控除特例に比べはるかに低いと言えそうだ。

ここ10年の適用動向

次に、3種の特例について、平成15年事務年度以降の適用状況を確認してみる。

上記グラフは情報公開により取得した国税庁の内部資料から作成した。ご覧の通り、買換えの場合の譲渡損失の損益通算等の特例と、買換特例や売り切りの場合の譲渡損失の損益通算等の特例の適用件数は、規模が異なり、買換えの場合の譲渡損失の損益通算等の特例が圧倒的に多いことがわかる。

買換え特例の適用が少ない理由

これには、買換特例における売却する住宅の保有期間の要件が、他の2つの特例に比べ厳しいことも影響しているものとみられる。3つの特例に共通する譲渡資産とは次の表の通り。

ただし上記の保有期間に違いがあるのは次の通りだ。

また買換特例には譲渡資産の譲渡対価は1億円以下という要件もある。

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