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大阪高裁 貸家等の評価につき空室期間5カ月は長期間と指摘

賃貸物件を相続する場合、賃貸されているか否かで、相続税が異なることをご存じだろうか。これは、相続税の財産評価基本通達(評基通)に明記され、相続時貸家・貸家建付地は、賃貸割合が高ければ高いほど、評価を低く抑えられる(評基通26、93)というものだ。

■一時的空室部分も通達上は評価減の対象

国税局のホームページには、「一時的に空室となっている部分の床面積を、実際に賃貸されている部分の床面積に加えて算定して差し支えありません」と記載があるのだが、この「一時的」の期間について、平成29年5月11日、大阪高等裁判所でひとつの判断が下された。

大阪高裁は、「空室の期間が課税時期の前後の、たとえば1カ月程度であるなど、一時的な期間であった場合。本案件については、空室期間が5カ月にも及んでおり、一時的な空室部分とは言えない」としたのである。

■空室期間がとくに重要と税務当局が主張

この裁判の論点は、一時的空室期間は、どれくらいかという点。納税者は、賃貸用マンションとして建築された物件について、相続時に空室が発生。一時的な空室ということで、賃貸割合を考慮せず、全体を貸家及び貸家建付地として評価して相続税を申告した。

というのも、もともと賃貸用マンションとして建築していること。空室理由は賃借人側の事情であり、賃貸以外には供給していないこと。建築後、相続後も継続して賃貸に供給していることなどから、「空室は一時的」と考えたためだ。

しかし、税務当局は、最も長い空室期間で59カ月、最も短い空室期間で5カ月であることから、一時的な空室とは言えないとして、賃貸割合に基づき納税額を算出すべきである、と指摘。

裁判所は「5カ月は期間としては長く、重要な要素なので考慮せずに評価することは認められない」と判断した。5カ月という期間だけでなく、全体の4割が空室、5年近く空室の部屋が多数あったことも、総合的に勘案された模様だ。

■空室期間を重要な要素と判断

例外的な取扱いが認められるか否かを判断するにあたって大阪高裁は、賃貸されていない期間(空室期間)が重要な要素となると判断したこと明らかである。一時的空室部分該当性の判断にあたっては、現実の賃貸状況、取り分け、空室期間の長短を重要な要素として考慮しなければならない。これを考慮せずに、本件各空室部分が「継続的に賃貸の用に供されている」状態にあるという理由のみで、例外的な取扱いは認められないと判決を下したわけだ。

各独立部分が相続開始前に継続的に賃貸されてきたかどうか、賃借人の退去後速やかに新斟酌人の募集が行われたかどうか、空室の期間、他の用途に供されていないかどうか、空室期間がたとえば、相続開始の前後1カ月程度であるか。

そのため、相続時の空室が一時的か否かは、そのあたりもきちんと見極める必要があると言える。とはいえ、不動産賃貸業を営む人の中には、この裁判結果に怯んだ人も少なくない。いくら借り手を探していても、借り手が見つからないというケースもあるからだ。

今回の結果を見ると、空室部分は貸家に該当しないことから、その面積に対応する部分は、自用家屋及び自用地評価となる。相続を見据えているならば、そのあたりも考えながら、相続対策しておくほうが賢いだろう。

著者: KaikeiZine編集部

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