みなさんは、 “相続”について考えたことがあるだろうか。親が病気中ならいざ知らず、まだ健康であるときには、親も子も相続のことなど考えもしないものかもしれない。しかし、突然、交通事故や自然災害などに遭遇するリスクもある。相続対策をしてこなかったために相続税の納税に困窮するのは、相続人である子の世代だ。そこで今回は、相続人の視点から相続について解説していきたい。
■相続税は現金納付
相続人にとって、もっとも重要な相続対策はなんと言っても納税資金の確保だ。親が残してくれた財産が、預貯金や売却容易な上場株式だけなら話は簡単でその何割かを税金として納付するだけだ。
ところがそんなケースは稀で、相続財産には親が経営している非上場会社の株式や不動産が多く含まれているケースが大半だ。こうした非上場株式やすぐには売却できない不動産を相続した場合でも、相続税は現金での納付が大原則なのだ。
そのため、相続が発生した途端に納税資金に窮することとなる場合がある。こうした事態に陥らないためには、親が元気なうちから納税資金の確保という観点からの相続対策が必須となる。
■被相続人(親)の財産を把握しているか?
納税資金の確保の重要性を理解しても、いくら納税資金が必要なのかは、親の財産の概要を知っていない限り雲を掴むような話で予想すらできない。相続税の基礎控除が縮小されて以来、財産の評価方法や税額の算出方法についての解説は世間に溢れているので、個々の詳細はそちらに譲るとして、我が家の相続が、納税資金に困るパターンかそうでないかだけでも早期に把握してほしい。
親が会社を経営していたり、親個人の不動産所得が多くあったりする場合には、意外にも納税に困るケースが多い。経営する会社の株式は換金できない資産にもかかわらず、相続財産としては高額になるケースが多く、不動産は収入を生むとはいえ、相続税を一括で納付出来るほどではない。
できれば税理士などの専門家に、相続があった場合の相続財産と必要納税額のシミュレーションをしてもらうのが賢明だ。場合によっては資産の生前贈与や売却、資産の組み換えを通じて、納税資金に困らないための相続対策が必要となるかもしれない。
■親に思いきって相続の話をしてみよう
納税資金の確保・対策が必要とはいえ、子である相続人だけでできることには限界がある。やはり親が元気なうちから、「将来の相続が心配だ」と子である相続人から話してみるべきだ。
ここで想定する親とは、いわゆる団塊世代の元気な人が多い。生前から相続の話をすることを嫌う方が多いのも事実だが、一度突き返されたからといって諦めてはいけない。子が相続を心配していると、親に気付かせるだけで一歩前進である。
粘り強く話を持ちかけることで徐々に親の心を柔らかくし、「一体我が家にはどのような種類の財産がどれだけあるか」「納税資金はいくら必要なのか」を一緒に検討し、適切な対策を施したい。子のほうから真剣に話をすれば、親も聞き耳をもってくれるのではないだろうか。将来、相続税に悩まないための対策を行うきっかけとなれば幸いである。